イチロー氏 マリナーズ殿堂入り式典で全て英語スピーチ16分

[ 2022年8月29日 02:30 ]

スピーチをするイチロー氏(AP)
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 マリナーズなどで活躍したイチロー氏(48=球団会長付特別補佐兼インストラクター)が27日(日本時間28日)、ガーディアンズ戦前に開催された同球団殿堂入り式典に出席した。マ軍に貢献した選手らが対象の殿堂で10人目の栄誉。かつての同僚らに見守られる中、計16分25秒間、全て英語でスピーチし、大きな喝采を浴びた。(杉浦 大介通信員)

 本拠地Tモバイル・パークで行われた球団殿堂入り式典。最大の見せ場は、公の場では貴重な全文英語スピーチだった。

 イチロー氏の第一声「What’s up, Seattle?」では4万5586人の観衆から笑いと大歓声が起こり、つかみはOK。ケン・グリフィー氏ら殿堂入りメンバーに加え、マイク・キャメロン氏、長谷川滋利氏、ドン・ワカマツ氏らが出席した。場内のビジョンでは、現役時代の功績を称える特別映像が流され、今季大ブレークの新人外野手J・ロドリゲスからは花束が贈られた。

 スピーチ後、グリフィー氏からマ軍の殿堂ブレザーを着せられると、改めて拍手が送られた。

 【スピーチ要約】

 What’s up, Seattle?(調子はどう?シアトルのみんな)

 ここにいられることは名誉です。22年前、マリナーズの一員となって私の人生は変わりました。球団とシアトルの町には感謝しきれません。マリナーズで長年オーナーを務めた、亡くなった山内溥(ひろし)さんの名前も挙げなければいけません。史上初の日本人野手としてシアトルでプレーする機会を与えてもらったことに永遠に感謝しなければいけません。

 最初のチームメートのうちの3人がここに来てくれています。エドガー(・マルティネス)、あなたは最も謙虚なプロフェッショナルであり、それは現役を引退しても変わっていません。ダン(・ウィルソン)、あなたはグラウンド上の“鉄人捕手”であり、クラブハウスをいつも盛り上げてくれました。

 ジェイミー(・モイヤー)、あなたはとてもクレバーな左腕でしたが、とてもおしゃべりでした。初めて会ったとき、あなたは英語で30分も話し続け、私は何を言っているかまったく分かりませんでした。今では英語が少し向上しましたが、依然としてあなたが何を言っているのかほとんど分かりません(笑い)。ただ、あなたが49歳までプレーしたことは心から尊敬しています。

 そして、私が“ジョージ”と呼びたい男がいます。ケン・グリフィー・ジュニア。He was my idol even before I came to America.(彼は米国に来る前から私のアイドルでした)。09年、彼はシアトルに戻ってきて、私はついに彼のチームメートになりました。ジョークが好きですが、私にとっては真のプロフェッショナルでもあります。言葉では表現しきれないほどに私を助けてくれました。彼のチームメートになれたことは本当に私のキャリアのハイライトの一つです。

 妻の弓子がここにいてくれることをうれしく思います。この名誉は彼女なしにありえませんでした。彼女はこの瞬間まで、旅の中で全ての試練に私と一緒に対処してくれました。

 マリナーズ入団後、最初の監督だったルー・ピネラ氏がここにいないことは残念です。最初の思い出は彼によってもたらされました。初めての開幕戦での勝利の後、クラブハウスに戻った時のことです。Lou kissed me, right here on the cheek. The manager gave a big wet kiss.(ルーに頬にキスをされました)。日本ではないことなので、ショックでした。正直、怖かったです(笑い)。これがアメリカの習慣ならここではやっていけないと思いました。その年、私たちは116勝を挙げましたが、私は116度もキスをされる準備はできていませんでした。それでも私はプレーを続け、そうできたことに感謝しています。

 現役は引退しましたが、シアトルと野球は常に私の心にあります。Baseball will forever be my soul(野球は永遠に私の魂であり)、私の使命は選手とファンがこの特別なゲームに感謝することを助けることです。

 シアトルに来た時、私は27歳でした。アメリカでのキャリアが19シーズンも続き、この日までシアトルにいることになるとは思いませんでした。それと同様に、あなたにも想像できないような将来への可能性があることを現役選手たちにも知ってほしいです。

 だからこそ、準備をして、ベストを尽くし、自身に限界を設けないでほしい。日本から来た痩せた小柄な男がこのユニホームを着て競い合い、あなたの目の前に立ち、この栄誉を受け取っているのであれば、あなたにもできない理由はありません。

 もちろん苦しんだり、フラストレーションを感じることもあります。私も毎年、そうでした。自分に限界を設けず、日々の試練を乗り越える情熱と欲求を見つけなければいけません。そのやり方であなたのポテンシャルを最大限に発揮でき、その時、想像もしていなかったことが達成できるでしょう。

 最後に、シアトルの素晴らしいファンへ。新人だった21年前、私に大歓声を送ってくれて以降、あなた方の声援は決して止まりませんでした。18年、復帰した際にはまるでずっとここにいたかのように感じました。私の帰還を歓迎してくれた情熱は私の胸を打ちました。私のキャリアの中でも最高級の思い出であり、その時の感情を決して忘れません。

 It is my greatest honor to have played for you as a Seattle Mariners. I will keep doing my best for you and the Mariners. Thank you.(マリナーズの一員としてあなた方の前でプレーできたのは最大の名誉でした。私はあなた方とマリナーズのためにベストを尽くし続けます)

 ≪大谷「目標」松坂氏「憧れ」≫イチロー氏を称えるビデオメッセージには、エンゼルスの大谷、同じ01年に新人王に輝いたカージナルスのプホルス、ルー・ピネラ元監督、松坂大輔氏(スポニチ本紙評論家)らが登場した。大谷は「小さい頃から目標にしていました。そういう方のビデオメッセージに出演できるのは少し不思議な気持ちですが、これからも目標にして頑張りたい」。松坂氏は「僕にとってイチローさんは憧れであり、尊敬する人であり、目標です」と熱く語った。

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