近代五種 佐藤大宗が銀メダル 五輪採用112年で日本人初の表彰台 「吐き気」とも戦い感謝の涙

[ 2024年8月12日 03:43 ]

男子近代五種で銀メダルを獲得した佐藤大宗は表彰台で感涙する (AP)
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 パリ五輪の近代五種男子決勝が10日に行われ、初出場の佐藤大宗(30=自衛隊)が1542点で銀メダルを獲得した。五輪採用から112年を誇る「キング・オブ・スポーツ」と呼ばれる伝統競技で、男女通じて日本勢初の表彰台。馬術、フェンシング、水泳を終えて4位につけ、射撃とランニングを交互に行うレーザーランで順位を上げた。19歳から競技を始めた遅咲きが、競技発祥の地で快挙を成し遂げた。

 ゴールした佐藤は、寝転がり、しばらく立ち上がれなかった。そして叫んだ。「歴史をつくりました」。入賞すらなかった競技でつかんだ銀メダル。「こんな最高の日は、人生で一度きりじゃないかと思う」と感無量の表情だった。

 準決勝をB組1位で通過し、表彰台がちらついた決勝の朝は、最悪だった。緊張に襲われ、「吐き気が止まらなかった」。それでも、大会側が用意する外国産馬に慣れるため、北海道にある競走馬の牧場に出向き、似たタイプの馬で練習してきた馬術で300点満点の好スタート。男子エペ日本代表とも剣を交えて強化したフェンシング、水泳部だった青森山田高時代、県で2位に入ったこともある水泳もそつなくこなした。膝に手をついて2度吐いてから臨んだ最終種目のレーザーラン。3位と6秒差で走り出すと「最初から最後まで攻める」と序盤から飛ばす。600メートルを5周するランニングの1周目で3位になると、射撃も命中率を上げた。

 高校卒業後、自衛隊に入隊した。近代五種との出合いはその数カ月後。体育教官に勧められ、自衛隊体育学校に入り本格的に始めた。海外勢に比べて競技歴は浅くても、「同じ人間。年数は関係ない」と信じてきた。努力を重ね結果を出しつつあったが、時に独りよがりになることがあった。

 出場を逃した東京五輪後、1歳年上の兄・光蔵さんに諭された。「トップアスリートはもっと周囲の支えのことを口にしている。今のあなたにそれができているのか」。そこから変わった。周囲への感謝を口にし、家族に「大会を見に来てほしい」と伝えた。人間的に大きくなると、昨年のW杯では日本勢で個人初メダルの2位になるなど、成績も付いてきた。

 銀メダルをかけられた表彰式。涙を流して言った。「支えてくれた方々に感謝しかない。自分一人じゃ獲得できなかった。みんなで獲ったメダルだと思っている」。それは、空白の時を埋めた30歳の本音だった。

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