阿炎 逆転初賜杯!今世紀初の巴戦で決着 史上初3場所連続平幕V

[ 2022年11月28日 04:56 ]

大相撲九州場所千秋楽 ( 2022年11月27日    福岡国際センター )

優勝杯を手に笑顔を見せる阿炎

 平幕の阿炎が12勝3敗で並んだ大関・貴景勝と平幕・高安との三つ巴の優勝決定戦を制して初優勝した。単独首位だった高安を本割で撃破し、決定戦で連勝した。3場所連続平幕優勝は優勝制度が導入された1909年夏場所以降で初。阿炎は20年7月場所中に新型コロナウイルス対策のガイドライン違反で3場所出場停止処分を受けたが、常に支えてくれた入院中の師匠・錣山親方(元関脇・寺尾)や家族らに恩返しを果たした。

 阿炎が無欲で初優勝を勝ち取った。勝てば決定戦進出が決まる本割の高安戦。激しい押し合いから、持ち味とする伸びのある突き押しで攻め手を緩めず快勝した。28年ぶりの3人による優勝決定巴戦では最初に高安と再戦し、今度は立ち合いで左へ変化する奇襲で連勝。続く貴景勝戦では「とにかく低く強く当たることを意識した」と一歩も引かず前へ出続けて押し切った。

 前日から優勝争いは全く意識しておらず「一番にだけ集中。自分の相撲を取りきることだけを意識した」という言葉どおりの集中力を、本割から3番続けて発揮した。

 初めて賜杯を抱いた阿炎は、師匠の錣山親方(元関脇・寺尾)への感謝の思いを口にした。「本当に迷惑しかかけてこなかったので、少しでも喜んでもらえたら」。そう話すと、こらえていた涙があふれた。19年には不適切な動画をSNSに投稿して注意を受け、それに関する研修会でも再び不適切な発言。20年には新型コロナウイルス感染対策に反する会食を行ったため、3場所の出場停止処分を受けた。引退届まで提出したが、家族と別居して部屋に住み込むことなどを条件に慰留された。猛省した阿炎は幕下から出直し、改めて相撲道にまい進することを決意。当時長女が生まれたばかりで「この子を守らなきゃいけない」と父の自覚も加わった。師匠のために、家族のために、心身ともに成長して昨年九州場所で再入幕を果たした。

 今場所中は師匠が体調不良で入院しており、直接指導を受けることはできなかった。しかし、病床から「一番に集中だ」「気合の入った相撲を見せてくれ」と激励のメールが毎日届いた。目の前の相撲だけを考えてきた日々。それでも頭の中には、師匠に恩返ししたいという思いが「頭のどこかにあった」という。「“おかげさまで”と言いたいです」。無欲の裏には、師匠への感謝が確かにあった。

 ≪上位陣不振が招いた下克上≫今年の大相撲は上位陣の不振が目立ち、6場所全て違う力士が優勝した。これは年6場所制となった1958年以降で72年、91年に次いで3度目(5場所開催の2020年を除く)。3場所連続で平幕が制覇するのは、優勝制度確立の1909年夏場所以降で初めてだ。秋場所で御嶽海、九州場所でも正代が大関から陥落。来年初場所は125年ぶりに「1横綱、1大関」となる。横綱、大関が2人になるのも93年初場所以来30年ぶり。戦国時代到来だ。

 ▽巴戦 三つ巴の優勝決定戦は1956年春場所(○朝汐、若ノ花、若羽黒)、61年秋場所(○大鵬、柏戸、明武谷)、65年秋場所(○柏戸、明武谷、佐田の山)、90年春場所(○北勝海、小錦、霧島)、93年名古屋場所(○曙、若ノ花、貴ノ花)、94年春場所(○曙、貴ノ浪、貴闘力)以来で28年ぶり7度目。3人の中で番付最下位が勝ち抜くのは初めてだった。96年九州場所は11勝4敗で曙、大関の3代目若乃花、武蔵丸、貴ノ浪、関脇・魁皇の5人が並び、曙を除く4人のトーナメント戦から巴戦。武蔵丸が曙と貴ノ浪に連勝して優勝した。

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