山口尚秀が100メートル平泳ぎで世界新で金メダル 家族のオンリーワンの思い背負いナンバーワンに

[ 2021年8月29日 17:26 ]

東京パラリンピック第6日 競泳 ( 2021年8月29日    東京アクアティクスセンター )

<パラリンピック 競泳男子100メートル平泳ぎ(知的障がい)>金メダルに輝いた山口(撮影・坂田 高浩)
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 男子100メートル平泳ぎ(知的障がい)決勝が29日に行われ、19年世界選手権王者の山口尚秀(20=四国ガス)が1分3秒77で自身の持つ世界記録を更新。パラリンピック初出場で金メダルを獲得した。

 25日の100メートルバタフライ(知的障がい)では、57秒11の自己ベストをマークし4位。本命の平泳ぎへいい流れをつなげ、この日午前中の予選では1分4秒45のパラリンピックレコード、自身の持つ世界記録1分4秒00に0秒45差に迫る泳ぎで全体1位で決勝進出を決めていた。「平泳ぎは世界記録更新で金メダル」と話していたが、その言葉通り、終始先頭を泳いで逃げ切った。

 「尚秀」の名は、山口が生まれた2000年のシドニー五輪で金メダルを獲得した高橋尚子と、プロ野球で当時巨人の4番だった松井秀喜からとったという。山口は3歳で知的障がいを伴う自閉症と診断された。ショックを受けた両親を「尚くんは絶対いい子やから」と励まし続けた祖父母に毎日のように健康施設に連れられ、自然と泳ぎを覚えた。小学4年時に開講した障がい児を受け入れる水泳教室に入り、高校1年で全国障がい者スポーツ大会出場。徐々に力を付けて国際大会にも進出。1メートル87、足のサイズは30センチという体格を生かして19年世界選手権を世界記録で制し、東京パラ代表にも内定した。

 母・由美さん(52)は父・峰松さん(55)、姉・智子さん(24)と交代で練習場まで車の送迎を繰り返し、家族総出で支えてきた。家には、応援歌がある。競い合うのではなく、個性を開花させればいいと歌うSMAPの代表曲「世界に一つだけの花」だ。由美さんは「本人が納得するのは金メダル。喜ぶ笑顔は見たい」と話しながら「1番になるのが凄いんじゃなくて、あの子にしかない個性や優しさを忘れないように」と話してきた。そんな家族の思いに、金メダル、しかも世界新記録という結果で答えを出した。

 ▼山口 金メダル獲得することと、自身が保持する世界記録を更新していくこと、2つの課題を達成できたことに、とてもうれしく思っています。(銀メダルのミシェルとは)正直、かなりの接戦になるかと思っていた。

 ◇山口 尚秀(やまぐち・なおひで)2000年(平12)10月28日、愛媛県今治市出身の20歳。3歳の時に知的障がいを伴う自閉症を診断され、小学4年で競技を始める。19年世界選手権の100メートル平泳ぎで世界新記録を更新し優勝。21年5月のジャパン大会で1分4秒00で泳ぎ自身の再び世界記録を更新した。

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