内村航平、鉄棒金メダル呼ぶ3種の車輪
【メダル候補の心技体】体操男子の種目別鉄棒に出場する内村航平(32=ジョイカル)は、離れ技に至る過程で3つの車輪を使い分ける。H難度「ブレトシュナイダー」は大きく、G難度「カッシーナ」は勢い良く、そしてE難度「コールマン」は気持ち良く。基本動作を追究し、自身初となる種目別の五輪タイトルを手に入れる。
内村が組み込む得点源の離れ技3つは、全て同じ技を“起源”とする。ベースになっているのは、バーを越えながら後方抱え込み2回宙返り懸垂の「コバチ」だ。冒頭の「ブレトシュナイダー」はコバチに2回ひねりを加えたもの。「カッシーナ」はコバチを伸身で実施し、1回ひねる。「コールマン」はコバチ1回ひねりとなる。バーから手を離し、次にキャッチするまでのわずかな時間、見る者はスリルを味わう。成否を分かつ技術は何か。内村が重視しているのは、鉄棒の基本動作「車輪」だった。
(1)ブレトシュナイダー 演技を始めてから12秒後、大技に挑む。「車輪で描く弧が、大きくなるような感じでやっている」。バーのしなりもコントロールし雄大な回転からH難度の大技につなげる。昨年9月の全日本シニア選手権で実戦初投入して以降、一度も落下せずに国内選考を駆け抜けた。
(2)カッシーナ 3つの技で唯一、姿勢は伸身。「車輪の勢いが違うことは、目に見えて分かるんじゃないですかね」。技をかける前の車輪で、下半身を大きく振って、反動をつける。フルパワーで体を空中に投げ出すことで、美しいG難度は成立する。
(3)コールマン ひねりが1回多いブレトシュナイダーの車輪と感覚は近いが、わずかに意識に差があるという。「この2つの車輪は見分けがつかないかもしれない」と前置きした上で、「ブレトシュナイダーよりもリラックスしてやる感じ」と説明。気持ち良く回った先に、E難度は余裕たっぷりに成功する。
3種の車輪を巧みに使い分けるため、周到な準備を行う。本番会場に入る前のウオーミングアップでは、上半身と下半身をつなぐ腸腰筋を入念にストレッチ。16年12月のプロ転向後からタッグを組む、佐藤寛朗コーチは「鉄棒にぶら下がって脱力した時に、大きく見えるかどうか」とし、「しっかり肩から抜けて、長く体が伸びている状態で(車輪を)大きく回すのがポイント」と説明した。
国内選考会の5演技は、現行ルールとなった17年以降の世界選手権金メダルの得点を上回り、6月の全日本種目別選手権の予選では世界最高となる15・766点をマーク。代表決定後の試技会で非公式ながら15・800点を叩き出した内村だが、五輪の鉄棒には苦い記憶もある。
12年ロンドン、16年リオデジャネイロ五輪は予選の鉄棒で落下。団体総合と個人総合の予選通過には問題がなかったが、種目別鉄棒の決勝には進めなかった。
1種目のみの出場となる東京五輪では落下は即、致命傷となる。まずは開幕翌日24日の予選を通過し、8月3日の決勝へ。五輪3大会連続の金メダルと、いまだ手にしていない五輪種目別のタイトルがターゲットだ。「目の前の試合を一つ一つ全力でやるという気持ちに変わりはない。満足いく演技を追求していきたい」。鉄棒の基本動作「車輪」から、黄金の軌跡は描かれる。(杉本 亮輔)
◇内村 航平(うちむら・こうへい)1989年(昭64)1月3日生まれ、長崎県出身の32歳。3歳で体操を始め、五輪初出場の08年北京大会で団体総合、個人総合で銀メダル。09~16年に個人総合で2度の五輪制覇を含む世界大会8連覇を達成し、16年12月に日本体操界初のプロに転向した。1メートル62、52キロ。
《Vなら84年ロス大会の森末以来》体操はこれまでの五輪で全競技中、日本最多の98個のメダルを獲得してきた。31個を数える金メダルのうち、最多は団体総合の7で、個人総合と種目別鉄棒が6で続く。64年東京五輪で日本選手団の主将を務め、「鬼に金棒、小野に鉄棒」と称された小野喬さん(89)は鉄棒で56年メルボルン、60年ローマと五輪連覇を達成した。
9日に町田市内で行われた聖火リレーの点火セレモニーで、小野さんは内村に「ぜひとも金メダルを獲って、日本の皆さまに喜んでいただくことを心から願っています」とエール。内村は体操ニッポンでは、小野さん以来の4大会連続の五輪出場となる。16年リオデジャネイロ五輪前に激励された経験があるキングは、「4大会連続が史上2人目で、過去にいたのはちょっと悔しい」と笑った。
日本勢の鉄棒の金メダルは84年ロサンゼルスの森末慎二から遠ざかっており、表彰台も04年アテネ銅メダルの米田功が最後となっている。
《最大のライバルはロンドン金の“鉄棒の神”ゾンダーランド》東京五輪で内村の最大のライバルは、エプケ・ゾンダーランドだ。内村が“鉄棒の神”と言うオランダの35歳は12年ロンドン五輪金メダル、世界選手権も3度制覇している。種目別W杯では同種目で1位となり、五輪切符を獲得した。離れ技を連続で実施するなどアクロバチックな演技が持ち味だが、出来栄えを示すEスコアでは内村が上回る。
2021年7月14日のニュース
-
白鵬、照ノ富士が首位並走 11戦全勝、後続と3差
[ 2021年7月14日 20:15 ] 相撲
-
組織委が五輪開閉会式の式典コンセプト発表 3つとも英語「あえて和訳はつけない」
[ 2021年7月14日 18:29 ] 五輪
-
IOCバッハ会長、コロナ検査体制に自信「効力発揮、成功している」
[ 2021年7月14日 17:00 ] 五輪
-
フィギュア、22年北京五輪選考基準を発表 シングル3枠目は技術点も加味
[ 2021年7月14日 16:40 ] フィギュアスケート
-
IOCバッハ会長反省?菅義偉首相と面会後「ジャパニーズピープル」連呼
[ 2021年7月14日 16:22 ] 五輪
-
古江彩佳、海外メジャー連戦へ弾みのゴルフを 16日開幕GMOレディース・サマンサタバサ・グローバルC
[ 2021年7月14日 16:04 ] ゴルフ
-
天理大の絶叫主将、松岡大和が4カ月でNTTドコモを退団 移籍か
[ 2021年7月14日 15:56 ] ラグビー
-
米国代表の旗手はファン付きジャケットを着用 小型のファンをウエアに装着して猛暑に対応
[ 2021年7月14日 14:58 ] 五輪
-
国内ツアー復帰戦の渋野日向子 小祝さくら、稲見萌寧と同組
[ 2021年7月14日 14:11 ] ゴルフ
-
男子バスケの米国代表が3戦目で初勝利 W杯準優勝のアルゼンチンに28点差で快勝
[ 2021年7月14日 09:55 ] バスケット
-
コロナ陽性の松山が練習再開 検査で2回陰性
[ 2021年7月14日 08:31 ] ゴルフ
-
バッハ氏イメージ一層低下と米紙 「中国の人々」の言い間違えを報道
[ 2021年7月14日 06:56 ] 五輪
-
バッハ会長 気持ちは既に北京五輪!?日本人を「チャイニーズ」と言い間違える
[ 2021年7月14日 05:30 ] 五輪
-
バッハ会長 感染拡大時の対応策への回答避ける
[ 2021年7月14日 05:30 ] 五輪
-
バイデン大統領夫人 東京五輪開会式に出席 大統領夫人の五輪開会式出席はロンドン以来
[ 2021年7月14日 05:30 ] 五輪
-
内村航平、鉄棒金メダル呼ぶ3種の車輪
[ 2021年7月14日 05:30 ] 体操
-
ベルニャエフ 薬物陽性で東京五輪欠場 16年リオ体操個人総合で銀メダル
[ 2021年7月14日 05:30 ] 体操
-
大坂なおみモデルのバービー人形 即完売「私の夢が実現した」
[ 2021年7月14日 05:30 ] テニス
-
フェデラー 膝のけがで五輪欠場 ツイッターで表明
[ 2021年7月14日 05:30 ] テニス
-
宮里藍さん 第1子妊娠を発表「幸せと喜びで胸がいっぱい」
[ 2021年7月14日 05:30 ] ゴルフ
-
東京五輪選手村が静かなオープン 入村は原則競技開始5日前から
[ 2021年7月14日 05:30 ] 五輪
-
スケボー五輪代表・白井 金髪で金メダルへ「ちょっとでも目立てば」
[ 2021年7月14日 05:30 ] スケートボード
-
五郎丸氏「社長になるのは一つの大きな目標」今後キャリア、日本ラグビー界の未来について語る
[ 2021年7月14日 05:30 ] ラグビー
-
五郎丸氏「パワープレート」をPR「より短時間で効率よくできる」
[ 2021年7月14日 05:30 ] ラグビー
-
大阪マラソン&びわ湖毎日マラソン 来年2・27統合大会開催
[ 2021年7月14日 05:30 ] マラソン
-
琴ノ若 平幕勝ち越し1号!一山本との2敗対決制し全勝横綱、大関を追走
[ 2021年7月14日 05:30 ] 相撲
-
照ノ富士 労せず10勝到達「自分のやってきたことを信じてやるだけ」
[ 2021年7月14日 05:30 ] 相撲
-
高安 逆転で6勝目!終盤へ「腰を落として、しっかり自分の相撲を取っていきたい」
[ 2021年7月14日 05:30 ] 相撲
-
中原ら5人が1位通過 社会人ゴルフ関東予選茨城会場
[ 2021年7月14日 05:30 ] ゴルフ