ゴルフ界のレジェンド尾崎将司と中嶋常幸が情熱を傾けるジュニア育成 共通する指導哲学

[ 2021年3月17日 12:00 ]

ジュニアゴルファーのスイングを見守る尾崎将司
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 【福永稔彦のアンプレアブル】国内男子ゴルフツアーの今年初戦・東建ホームメイトカップ(4月15日開幕、三重)まで1カ月を切った。多くの男子プロがオフのトレーニングを経て、実戦や練習ラウンドをこなしている中、レジェンド2人の動向が気になる。

 ツアー94勝の尾崎将司(74=I・S・T)は今年のツアー出場の可能性について「俺に期待しないでくれ。戦いたいという気持ちが去年一回くじけている。そこから立ち直らせていかないと」と言葉を濁している。

 ツアー48勝の中嶋常幸(66=静ヒルズCC)も「シニアが中心。レギュラーツアーはダンロップスリクソン福島オープンには出たいと思うけど微妙だね」と歯切れが悪い。

 ともに国内はもちろん海外メジャーでも活躍してきた先駆者。試合会場で姿を見る機会が少なくなるのは寂しい限りだが、致し方ないところもある。彼らは既にツアーでの戦いから後進の育成に軸足を移しているからだ。

 尾崎は「ジャンボ尾崎ゴルフアカデミー」を立ち上げ、多くのジュニアを育ててきた。門下生の原英莉花(22=日本通運)と笹生優花(19=ICTSI)は昨年そろって2勝を挙げた。

 中嶋が主宰する「ヒルズゴルフ・トミーアカデミー」は日本ツアー5勝、米ツアー3勝の畑岡奈紗(22=アビームコンサルティング)を輩出している。2人は指導者としても実績を残している。
 ただ尾崎は「教えることは選手にとって10分の1とか、20分の1程度。あとは自分でつくっていかなければいけない。それが個性、自分のもの。ただケツを叩いて“頑張らんかい”というのが俺のレッスン」と強調する。原や笹生に聞いても、尾崎は決して多くのことを教える訳ではなく、節目に短い言葉を伝えるだけだという。

 中嶋も「俺たちが教えているのはほんのかけら。手取り足取り教えるよりも一瞬の言葉がひらめきにつながる。先に進める力になるものをひとかけらでも与えられたら十分」と力説する。
 尾崎にも、中嶋にも、積んできた経験、蓄えてきた知識は誰にも負けないという自負があるはずだ。それでも教えすぎないことを心がけている。

 尾崎は「男子にもっと頑張ってもらいたい。男子を育てたい気持ちがある」と言う。自分と同じようにスケールの大きな男子プロを育てる夢がある。

 一方の中嶋は「卒業したプロが活躍するのはもちろんうれしいけど、目標を達成できなくてもゴルフが人生の役に立ったという子になってほしい」と人間的な成長を手助けすることに重きを置く。

 指導者として目指すところは少し異なる。しかし、教え子に自分自身で困難を乗り越え、前に進む力を育んでほしいという思いは共通している。2人のレジェンドがどんな人材を育てるのか。その手腕に期待している。(スポーツ部専門委員)

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2021年3月17日のニュース