女子ゴルフ初戦「今年のツアーは見どころいっぱい。切り口いっぱい」小林浩美会長単独インタビュー

[ 2021年3月4日 05:31 ]

ツアーへの思いを語り、色紙に「光」と記した小林浩美会長(撮影・島崎忠彦)
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 女子ゴルフツアーの21年初戦、ダイキンオーキッドレディースは4日、沖縄・琉球GCで開幕。今大会は1日1000人の上限付きながらも1年3カ月ぶりに有観客開催となる。注目の初日を前に、日本女子プロゴルフ協会(LPGA)の小林浩美会長(58)に今季のツアーの見どころやコロナ禍でのツアー開催の思いを聞いた。

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 ――21年の初戦が1年3カ月ぶりの有観客で開催されます。
 「私もそうですが、選手はとてもうれしいと思います。お客様に見てもらえる喜びや感激、久しぶりに味わうプレッシャーなどが心の中で入り交じるでしょうね」

 ――やはり観客の有無の影響は大きい?
 「たくさんのお客様が見に来てくださることが、ここ何年も続いていて、いろんな選手が大活躍してワクワクする試合が多かった。これを間近で見ていただけたらどんなに沸くだろうな、と。本当に寂しかったですね。選手も戸惑っていたと思います。試合中に歩くペースまで変わったという声も聞きましたから」

 ――観客の応援や拍手でプレーも変わる?
 「自分の現役時代を思い返しても全然違います。やる気が、俄然(がぜん)変わる。無観客だとナイスプレーをしても無反応なわけですから、自分で張り合いを上げていかないといけない。だから“頑張れ”と応援してもらえると、どんどん乗せてもらえます」

 ――そういう意味で今大会の主催者はよく決断してくれた。
 「本当にありがたいです。ファンのため、選手のため、そしてツアー全体のため、さらに東京五輪があり、スポーツのためということで、大義と俯瞰(ふかん)的な判断でぎりぎりまで(決定を)待ってくださった。やはり初戦でファンの皆様を迎えられるのは大きい。第一歩を踏み出せるという感じです」

 ――今年の見どころは?
 「毎年、いろいろなタイプの選手が出てきて、プレーも積極的で、ハイスコアになっています。競争も激しい。“ここが見どころ”と言えないくらい、見どころいっぱい。切り口いっぱいです」

 ――笹生選手(優花)、古江選手(彩佳)ら若手の台頭も目覚ましい。
 「今の選手は意識が高い。(プロになって)いきなり優勝するとか、世界で勝ちたいとか目標が高いんですよ。そこに向かって一心に努力しているからレベルも上がる。ジュニア時代にJGA(日本ゴルフ協会)のナショナルチームで、科学的なトレーニングや指導を受けてきたというバックグラウンドも大きいと思います。古江さんはいい例です。プロになって周りの選手と切磋琢磨(せっさたくま)しながら、さらに才能を開花させています」

 ――協会のさまざまな改革の効果も?
 「13年から“世界で勝つ”を目標にさまざまなツアーの強化策に取り組んでいます。最初に行ったのが、4日間競技を増やしたこと。米ツアーは4日間の試合が一般的。(会長に就任した)11年は5試合でしたが、それが今年は16試合まで増えた。4日間になるとまず体力が必要。そのために体を鍛え、体力がつくとショットに威力が出てきて、集中力も増します。ひいては精度や技術力向上につながります」

 ――4日間に慣れると米ツアーに行っても戸惑うことが少ない?
 「4日間だと予選は午前と午後にスタート時間が分かれるので、生活のペースも変わります。でも、日本でそれを日常的にやっていれば、海外メジャーに行っても普段のペースで回れます」

 ――下部ツアーのステップアップツアーの充実も見逃せない?
 「若手の登竜門ですから。大きいですよ。ステップは12年から大改革しました。まず、それまでなかった(CS)テレビの生放送を開始しました。競技を2日間から3日間にして、予選カットも取り入れました。それにより一打の重みが増し、選手は一打一打にしびれるようになった。それが精神面や技術面のレベルアップにつながり、ギャラリーも入って、モチベーションも高くなった。世界ランキング対象ツアーにもなり、レギュラーツアーと同等の環境のもとステップからレギュラーに行っても、すぐに力を発揮できるようになりました。河本(結)選手は(18年に)ステップで4勝して翌年のツアーですぐに優勝しました」

 ――環境を整えるのは大事?
 「環境が人を育てるとの思いで、協会がやるのは、いかに選手の能力を伸ばし環境を整え、競争力を高めるか。そういう制度改革をこの8年くらいガーッとやってきました」

 ――東京五輪もモチベーションになる?
 「国の代表ですからね、名誉です。(本番の)1カ月前まで選考が続くから、それまでに試合で数多く上位に入ることが大事です」

 ――五輪ランキングで現在、日本人3位の古江選手にもチャンスはある?
 「ありますよ。最後まで分からないですし、できるなら(代表に)4人入ってほしいです」

 ――同ランク日本人2位の渋野(日向子)選手は、昨年の前半苦しんだが、12月の全米女子オープンで優勝争いした。
 「やっぱり大舞台に強い。力があります。(昨年前半の不調は)伸びようとする時の過渡期の壁。誰にでもあることです。でも、そこから新しい気持ちでやり直して、再度海外メジャーで優勝争いしたのですから、凄い。普通なら過去の実績に引きずられがちになります。切り替えの早さには驚かされました」

 ――昨年はアース・モンダミンカップなどで行ったインターネットの生中継が好評だった。
 「なんといってもアース製薬様のおかげです。ファンのみなさんにプロスポーツは生、という醍醐味(だいごみ)を味わっていただき、とても喜んでいただきました。大会スポンサーの方々の間でも、ネット中継に大きく興味が出てきたと感じます。最終戦(JLPGAツアー選手権リコー杯)はHuluさんでネット配信し、地上波の日テレさんで録画放送しましたが、昨年の女子の最高視聴率でした。両方の数字が良くて、ネットと地上波が共存できることが証明されて楽しみが増えました」

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