【荒磯親方 初場所総括】大栄翔、突き押し極めて技能賞 朝乃山は照ノ富士への苦手意識打開を

[ 2021年1月26日 07:30 ]

初場所千秋楽、大栄翔(左)が突き出しで隠岐の海を破って優勝を決める
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 両横綱ら関取19人が休場した大相撲初場所は、平幕の大栄翔が13勝2敗で初優勝を果たした。持ち前の突き押しに磨きをかけ、序盤の勢いを15日間持続させた。カド番の2大関、関脇・照ノ富士らも存在感を発揮。6年連続で初優勝力士が誕生するなど調整が難しいと言われる新年最初の場所を、スポニチ本紙評論家の荒磯親方(元横綱・稀勢の里)が総括した。

 緊急事態宣言が発令されるなかでの開催。初場所は6年連続で初優勝力士が誕生しました。私の初優勝も4年前のこの場所。近年荒れる印象が強くなっていますが、年末年始の日程も少なからず影響しているように思えます。現在は場所初日の2週間前、番付発表の日から仕上げていくのが主流。ただし初場所は正月休みをはさむ関係で2週間以上前に番付発表が組まれることが多く、微妙な日程のズレが調整を難しくさせています。いかに万全の状態で初日を迎えるか。優勝した大栄翔は役力士と対戦した7日間を素晴らしい相撲で制し勢いに乗りました。コロナ下で出稽古が禁止されるなか、部屋所属関取は6人。稽古相手に不足はありません。幕下以下の力士としか稽古ができなかった朝乃山らが序盤でもたついたのとは対照的でした。調整力の勝利といったところでしょうか。

 後半戦は硬さも見られましたが、連敗しなかったように日々の切り替えもできていた。緊張と重圧があった千秋楽の隠岐の海戦で持ち味を全て出し切ったのは立派。突き押しは単純な動作だが、極めるには難しい。それだけに技能賞を獲得したのは個人的にもうれしかった。私も現役時代には胸を出すなど一緒に稽古をした相手。当時から突き押しにこだわりを持っていたので、地道な努力が報われた感じです。

 カド番の大関2人はともに11勝。終盤まで優勝争いに絡んだ正代は大関としての責任は果たしました。朝乃山も後半は本来の相撲を取り戻してくれましたが、心配なのは照ノ富士への苦手意識です。今場所も12日目に対戦して相手の力に屈しました。右の相四つ。先に上手を取られて防戦一方になるパターンを繰り返しています。上を目指すなら苦手をつくることはご法度。対戦成績で4戦全敗の状況を重く受け止め、何か新しいことをして打開しなければ、と危機感を持って取り組んでほしい。

 照ノ富士は2大関を破るなど安定した力を発揮。大関時代の経験を生かし終盤は強さが目立ちました。大関復帰が懸かる春場所。どんな相撲を取るか期待が大きいです。(元横綱・稀勢の里)

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