“リオ金”高橋礼華さんが語る バドミントン日本代表・女子ダブルスの過去、現在、未来

[ 2020年11月11日 05:30 ]

2020+1 DREAMS

笑顔を見せる高橋礼華(撮影・会津 智海)
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 【THE TOPICS】16年リオデジャネイロ五輪のバドミントン女子ダブルスで金メダルを獲得し、今年8月に引退した高橋礼華(あやか)さん(30)がインタビューに応じた。松友美佐紀(28=日本ユニシス)と「タカマツ」の愛称で知られた功労者が、来夏の東京五輪でメダル獲得が期待される日本ペアの系譜や現在の勢力図など金メダリストならではの視点から“女子ダブルス講座”を特別開講。後輩ペアへエールも送った。(構成・大和 弘明)

 私は勝てなかった時期の日本バドミントン界も知っています。リオ五輪で初めて私たちが金メダルを獲ってから注目され、強くなったと思われていますが、日本の女子ダブルスが強くなったのは先輩たちが頑張ってくれたからです。結果を積み重ねてきたことで“私たちも”という思いが代々あったのです。

 末綱聡子さんと前田美順さん(スエマエ)、小椋久美子さんと潮田玲子さん(オグシオ)がまず、女子ダブルスを広めてくれました。スエマエさんが08年北京4位となり、藤井瑞希さんと垣岩令佳さん(フジカキ)が12年ロンドンで銀メダル。先輩たちがいたから自分たちも金メダルを獲ることができた。それが後輩たちにつながり、日本が強くなってきたのです。

 私が日本代表に入った10年前は、練習に対しての緊張感はかなりありました。先輩に簡単には話しかけられず、先輩たちがコートに入っているとミスできませんでした。私たちの方がレベルが下なので、相手になっているか心配でした。コートに立てばライバルなのですが、先輩ペアには尊敬する部分がたくさんありました。「いいところを盗んでやろう」という気持ちの練習は楽しかったです。

 海外遠征先での環境は、かなり良くなりました。昔は同行するトレーナーさんは1人だけ。栄養士さんやストリンガーさんがついて来ることもなかった。今は味の素さんのサポートもあって、試合が終わっておいしいご飯も食べられます。昔は試合が午後11時に終わったら、お店が開いていないので、ファストフードを食べていました(苦笑い)。

 遠征先の練習後は、自分と松友の部屋で佐藤冴香(ロンドン五輪女子シングルス代表)を含めた3人でシャトルを整理し、全員に“シャトルが欲しい方は部屋に取りに来てください”とメールしていました。今は何でもやってもらえて、世界を見ても日本の環境が一番いいのではないですかね?昔の経験を知れば、何でも当たり前じゃないと分かってもらえると思います。

 東京五輪は日本2、中国2、韓国2で占めている世界ランキング上位6ペアすべてに優勝のチャンスがあると見ています。飛び抜けて強い人たちがいないので、どのペアが優勝するか全く想像がつきません。日本、中国、韓国で三つ巴の状態です。

 私たちは頭脳戦が得意でしたが、そういうペアは少ない。世界を見ても、頭脳戦よりは力と我慢が主流。韓国ペアは力で押せ押せです。中国ペアは特徴があまりありませんが、五輪本番で怖いのは中国。ロンドン五輪は全種目で金メダルを獲得していましたが、リオ五輪で女子種目のメダルを逃したからです。女子ダブルスのスタッフを韓国から呼ぶなど、変えてきた部分がいっぱいあるので不気味です。

 今の日本の女子ダブルスはみんな身体能力が高いです。福島由紀、広田彩花組(フクヒロ、丸杉Bluvic)なら粘り、永原和可那、松本麻佑組(ナガマツ、北都銀行)なら身長の高さ、と特長があります。海外ペアからみれば、粘られるのが一番きつい。そういう面で、世界と戦うのは福島、広田組が有利かもしれません。

 もちろん東京五輪が今年開催されていれば福島、広田組が金メダルに近かったと思います。しかし、1年延期で福島は28歳となり、体力がちょっと落ちる部分もあるかもしれません。自分も26歳がピークで、そこ(リオ五輪)に合わせていました。1年後にメンタルも体力も整っていることが重要でしょう。

 一方で、永原、松本組は世界選手権2年連覇で、大舞台に強い印象があります。彼女たちは韓国ペアに負けがちなので、五輪までに克服することが重要になります。ワールドツアーが本格的に再開されたら、1大会は優勝しておいた方がいい。勝ち癖をつけてほしいからです。

 東京五輪は、後輩2ペアともプレッシャーに思ってなさそうです(笑い)。伸び伸びとやってもらえればいいのかな。女子ダブルス含め、日本代表は応援してもらえると力を発揮する選手たち。まずは五輪を楽しんでプレーしてほしいです。

 《ミックス転向“相棒”松友にエール》高橋さんは13年間、苦楽をともにした松友にもエールを送った。混合ダブルスに転向した松友は金子祐樹と“カネマツ”を結成。年末の全日本総合選手権(東京都町田市)が初陣となる。「3連覇中の渡辺、東野組にとっては嫌な相手になると思う。シードではないから、どこに入るか分からない」と分析し「個人的には女子ダブルスもやってほしかったけど、ミックスでも一番を獲る松友を見たい」と期待を込めた。

 《人格優れた次世代育成へ カフェや食にも興味津々》高校時代に成長の足がかりを得た高橋さんは、自身の経験を基にジュニア世代への指導などに注力していくという。技術だけでなく「強ければOK、という感じのバドミントン界になってほしくない」と人格形成の面も伝えていく。また「カフェや食に興味がある」とし、国内大会の会場で観客と選手が楽しめる軽食のプロデュースにも意欲的。「コーヒー片手にサンドイッチなら、みんな楽しめるのかな」と構想段階だが、会場に“アヤカ・サンド”が並ぶ日が来るかもしれない。

 ◆高橋 礼華(たかはし・あやか)1990年(平2)4月19日生まれ、奈良県橿原市出身の30歳。宮城・聖ウルスラ学院英智中、高を経て09年日本ユニシス入社。高校2年時からペアを組んだ松友との女子ダブルスで、14年10月に現行の世界ランキング制度で全種目を通じて日本勢初の1位に。同年のBWF(世界連盟)スーパーシリーズファイナルで日本勢として初優勝。妹・沙也加(28)は女子シングルス日本代表。1メートル65。右利き。

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