“闘う看護師”バレーボーラー・米村尊 コロナ禍でもコートと命を“守る”!

[ 2020年11月11日 05:30 ]

2020+1 DREAMS

看護師として命の最前線を担う米村(ヴィアティン三重提供)
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 【THE PERSON】コロナ禍で一度は完全に止まったスポーツ界も少しずつ以前の姿に戻りつつある。バレーボールVリーグ男子2部のヴィアティン三重のリベロで看護師でもある米村尊(34)は病院に勤務しながら、10月に開幕したリーグ戦でプレー。コロナ下で戦う難しさや課題などを語った。

 ユニホームを着ればコート上の守護神、看護服を着れば命の最前線を担う戦士になる。三重県桑名市総合医療センターの集中治療室(ICU)に勤務する米村には、コロナ下のスポーツ界で見えるものがある。

 「無観客の方がクラスターの心配はない。それでも試合を生で見て五感を刺激して、生活を豊かにするためにも、ぜひ会場に来てほしい」

 6月にプロ野球が開幕し、Jリーグが再開。10月17日にはVリーグがスタートした。入場者数を最大50%に制限した有観客で行われたが、大声の応援などが禁止された空間に、選手もファンも戸惑いはある。動線も区別され、全く交流ができないような状況だ。

 「一言で言うと独特。イマイチ盛り上がらず、ファンが離れてしまうのではないか不安。もう少し寄り添った対策ができたと思うし、各チームもSNSとか、何か新しいツールで楽しませていく必要がある」

 手洗い消毒、マスクの着用。体調不良であれば生観戦を自粛する。先が見通せない現状でスポーツを楽しむためにも、一人一人が徹底してほしい。それが米村の願いだ。

 長崎大医学部を卒業し、10年から看護師、15年からVリーガーとの両立を図ってきた。

 「コロナの流行当初は、ただの風邪だと思ってた。正直なめてましたね」

 危機感を覚えたのは、治療に必要な物資が次々になくなったこと。1日に2、3回替えていたマスクは、手洗いをして1週間1枚に制限。防護服は70Lのゴミ袋を切って代用し、本来感染症対応の担当ではないICU勤務の米村もPCR検査に駆り出された。

 「おままごとみたいで、あり得ない状況。もし自分がかかったら患者さんにもうつしてしまうし、本当に怖かった」

 細心の注意を払って日々仕事しているからこそ「コロナは風邪」という風潮に警鐘を鳴らす。

 「最近はマスクをしない人が増えてきた。自粛期間みたいに閉じこもる必要はないが、コロナの薬はまだない。今まで通り対策をしてほしい」

 米ニューヨークで医師をしている友人から以前、「日本の衛生管理はすごい」と言われたことがあるという。至る所に置かれた消毒液に、当たり前のように行われる検温とマスクの着用義務。

 「“米国人は絶対にそんなことしない”って言われました」

 先進国の中でコロナの感染拡大を最小限に抑えていると言われている日本。来夏に五輪開催となれば、海外から選手や観客が訪れる。

 「手洗いやマスクが習慣化してない人に“これが習慣だよ”って言っても、絶対にできないと思う。日本の当たり前の水準に合わせられない場合、そのときは医療従事者として注意喚起していきたい」

 コロナの収束が見えない中、世界中で新たな“スポーツ様式”を練り上げていく必要がある。来夏の祭典を心から楽しむためにも、いま一度気を引き締め直す時期なのかもしれない。(小田切 葉月)

 ◆米村 尊(よねむら・たける)1986年(昭61)10月1日生まれ、福岡県行橋市出身の34歳。女子日本代表の竹下佳江に憧れ、中学1年からバレーを始める。当時の身長は1メートル36。長崎大医学部に進学し、看護師を目指しながらクラブチームでプレー。Vリーガーとしては15~16年奈良、16~18年つくばを経て、18年から現在所属している三重に加入。リベロのレギュラーとして、V2初参戦となった昨季は6位入りに貢献した。1メートル66、63キロ。

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