トライアスロン佐藤優香 五輪延期は「プラス」 病乗り越え2大会連続出場へ再起誓う

[ 2020年6月15日 05:30 ]

2大会連続の五輪出場を誓う佐藤
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 トライアスロン女子の佐藤優香(28=トーシンパートナーズ・NTT東日本・NTT西日本・チームケンズ)がスポニチ本紙の取材に応じ、2大会連続の五輪出場へ再起を誓った。昨春に甲状腺機能低下症が発覚。不本意なシーズンを送っただけに延期を「チャンス」と捉え、招致にも携わった東京五輪でのメダル獲得を目指す。

 3月下旬。東京五輪の延期をニュースで知った佐藤は衝撃を受けたが、同時に自身には朗報だとも思った。

 「昨シーズンから体調改善と向き合ってきた自分には、延期はプラスになると思いました。あと1年あれば間違いなく体調は回復に向かうだろうなと」

 18年の夏頃から不調を感じていた。疲れやすく、疲労がたまると微熱が続く。回復も遅い。昨春に検査を受け、体の新陳代謝を促す甲状腺ホルモン作用が低下した「甲状腺機能低下症」と診断された。「ショックも大きかったけど、何かしら体に問題が起きていると感じていたので、分かって良かったという気持ちがありました」

 9歳からトライアスロンを始め、18歳でユース五輪の初代女王に輝くなど、将来を期待されてきた。初出場だった16年リオデジャネイロ五輪は日本人最高の15位。東京五輪に向けてさらなる飛躍を誓っていただけに、不調の原因が判明した安堵(あんど)の方が大きかった。

 服薬治療とともに食事など日常生活に気を使いながら練習に励む日々。それでも昨年は、「1年間で見ると半分くらい」の練習メニューしかこなすことができなかったという。大会では結果が出ず、途中棄権することが増えた。一方で、病気と上手に付き合う感覚を、徐々に身に付け始めてもいた。「一定の頑張るゾーンに入ると、頭から体が冷えていくような感覚に陥って一気に動かなくなることがあったけど、今はそのゾーンに入らないことに気を付けながら軸となるフィットネスレベルを向上することが必要と気付きました」。時間があればもっと良くなる。そう確信した中での延期だった。

 3月のオーストラリアでの今年初戦を終えた後は新型コロナウイルス感染拡大で試合の延期が相次いだため、4月を思い切って休養に充てた。「低強度の練習はやっていたけど、体のダメージも少なくて、間違いなく回復に進んでいると感じました」。国際トライアスロン連合が発表した試合の再開は9月。5月に入ってから再スタートを切り、「去年は練習を積めなかったので、開幕に向けてしっかり準備をしたい」と決意を新たにする。

 東京五輪への思いは人一倍強い。13年9月、21歳だった佐藤はトライアスロン界のホープとして、アルゼンチンで行われたIOC総会の20年五輪招致最終プレゼンテーションに登壇した。「あの舞台に立たせていただいて東京五輪が決まったので、私も何か一つ形として残したいと思っています」。来夏は29歳。所属チームでも最年長となり「トライアスロンの年齢的に一番、良い時期」で大一番を迎える。

 「五輪でメダルという昔からの夢を、東京で果たしたい」。苦境を乗り越えたその先へ、本領を見せる時だ。

 ▽トライアスロン東京五輪への道 個人種目は各国・地域から男女各最大3人が出場可能。日本は開催国として各2枠と新種目の混合リレー(男女2人ずつ、個人出場選手で構成)の出場枠を持っており、五輪世界ランキングによる国別の個人3枠目獲得を目指している。代表選手選考は五輪予選対象となる世界シリーズなどの国際大会から総合的に判断される。

 ◆佐藤 優香(さとう・ゆか)1992年(平4)1月18日生まれ、千葉県佐倉市出身の28歳。佐倉中―日本橋女学館高。高校卒業後はチームケンズに所属。母親の勧めで9歳から競技を始め、10年のユース五輪で優勝。14年に日本選手権を初制覇。リオデジャネイロ五輪は日本人最高の15位。18年ジャカルタ・アジア大会では混合リレー優勝に貢献した。1メートル71。

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