角界全950人超、抗体検査実施へ 不安取り除くため…親方、力士、行司ら協会員の希望者対象

[ 2020年5月14日 05:30 ]

ひっそり静まり返った両国国技館(撮影・西海健太郎)
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 日本相撲協会は13日、力士や親方ら900人を超える協会員のうち、希望者を対象に新型コロナウイルスの感染歴を調べる抗体検査を実施すると発表した。各部屋には既に書類を送付して希望者を募っており、返送された書類を基に専門機関による各部屋ごとの抗体検査の日程を調整していく。

 芝田山広報部長(元横綱・大乃国)は電話取材で「痰(たん)や鼻水、咳(せき)が出ると、“もしかしたらかかっているのではないか”という不安感が誰でもあると思う。検査を行うことで、団体生活や稽古を行う上での不安を取り除くことができると考えている」と説明した。検査終了までは約1カ月を要する見込みという。

 緊急事態宣言が今月31日まで延長される見込みとなった時点で、相撲協会は2週間延期した夏場所を中止にすることを決めた。7月の名古屋場所も大人数が移動するリスクなどを避けるため、会場を東京・両国国技館に変更して無観客での特別開催を目指している。

 抗体検査で協会員のおおよその感染状況を把握した上で専門家から助言を受けることで、感染対策などに活用していく考えだ。芝田山広報部長は「次の場所開催への対策に役立てていきたい」と話した。また、各部屋に課している朝晩の体温測定などの体調確認も継続していくという。

 ≪955人+番付外力士≫日本相撲協会の公式サイトによれば、力士や親方らを含めた協会員は955人。力士は、中止となった夏場所の番付で幕内から序ノ口まで694人おり、「親方」と呼ばれる年寄は102人、行司は45人いる。他に、まげを結う床山や、取組の際にしこ名を呼び上げる呼び出し、若手の指導育成などを行う力士出身の若者頭、用具運搬などを行う世話人がいる。また、これらとは別に、ケガなどで番付外となっている力士も一定数いる。

 ▽抗体検査 新型コロナウイルスへの感染の有無を簡単に短時間で調べる方法。感染から一定期間たった後に体内にできる抗体を血液から探す。抗体は免疫システムがウイルスと闘った痕跡で、過去の感染履歴が分かる。同様に短時間で判別できる抗原検査はウイルスに特有のタンパク質(抗原)にくっつく物質を使って、患者の検体中にウイルスがいるかを調べる。インフルエンザの迅速診断によく使われる。

 ▼医療ガバナンス研究所・上昌広氏 抗体検査をすることで、その環境がウイルスが広がりやすいのか、広がりにくいのか現状の把握ができる。医療機関などの調査では、東京で5~6%の人に抗体があるという結果が出た。その数値より高ければ相撲の場は感染拡大しやすく、低ければ感染が起きにくいと言える。スポーツの各競技団体ごとに検査し、感染しにくい競技と分かったものを再開していくことも可能だ。

【新型コロナと角界】

 ▼4月3日 夏場所、名古屋場所の2週間延期を決定。師匠会で出稽古禁止を通達。

 ▼8日 幕下以下の力士1人が高熱などの症状により都内の病院でウイルス感染の簡易的な検査を受ける。

 ▼10日 当該力士は精密検査の結果、陽性と判明。

 ▼11日 保健所が当該力士の所属する部屋に対し、22日まで待機するよう指示。

 ▼13日 2日以上、高熱などが続いた場合、報告することを義務付け。当面は接触を伴う申し合いやぶつかり稽古の自粛も要請。

 ▼22日 新型コロナウイルスに感染した幕下以下の力士が所属する部屋の待機期間終了。

 ▼25日 高田川親方と弟子の十両・白鷹山、幕下以下の力士4人が新型コロナウイルスに感染したと発表。協会員の感染者は計7人に。

 ▼30日 高田川親方ら計6人がこの日までに退院したことを芝田山広報部長が明かす。

 ▼5月4日 緊急事態宣言の5月31日までの延長が決定したことを受け、夏場所の中止を発表。7月の名古屋場所は東京開催となる。

 ▼13日 入院していた三段目・勝武士さんが、新型コロナウイルス性肺炎による多臓器不全で死去。

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2020年5月14日のニュース