追悼連載~「コービー激動の41年」その79 早すぎた?戦列復帰 満身創痍の晩年
2013年4月12日のウォリアーズ戦。地元ロサンゼルスでのホームゲームで、コービー・ブライアントは左足のアキレス腱を断裂した。第4クオーターの残り3分6秒。ウォリアーズのハリソン・バーンズをかわしてインサイドを突こうとした際に「何かが裂けたのがわかった」と最悪の事態と向き合うことになった。控えセンター、ロバート・サクレ(元サンロッカーズ渋谷)とゲイリー・ビッティ・トレーナーに支えられてロッカールームに下がると、南アフリカ出身の外科医であり、実業家としてレイカーズの共同オーナーにも名を連ねていた(2010~18年)パトリック・スンシオン氏(現ロサンゼルス・タイムズ・オーナー)の診察を仰いだ。この時点ではまだ患部を温存して治療する方法を模索していたが、同氏はやがてこれを断念。「あした手術しなくてはいけない」とブライアントに告げた。
「これから越えなくてはいけない山のことを考えると落ち込んでしまった。長い道のりなんだと思ったが、はたして乗り越えられるかどうかはわからなった。でもそのとき娘たちがロッカールームに来たんだ。だから“パパは大丈夫だよ。必ず治るからね”と言ったんだ。本当に疲れたよ」
このときブライアントは34歳8カ月。アキレス腱断裂から復帰しようとするNBA選手としては“高齢”の部類に入った。しかも腱が完全に断裂している「グレード3」の状態。負傷した翌日の4月13日に手術を受けたときには「全治まで6~9カ月」と診断されたが、アキレス腱断裂からの戦列への「復帰予想期間」は、やがてブライアントの症例から「11カ月以上」が定説となっていく。専門医の中には「プロのアスリートならば1年は必要」とする意見もあり、同じ故障を負ったネッツのケビン・デュラント(31)やウィザーズのジョン・ウォール(29)らはこのガイドラインに従っている。
なぜアキレス腱断裂からの復帰プログラムで“ブライアント・パターン”がNBAから消去されたのか?それは彼が手術から239日目となった2014年12月8日に戦列に復帰してから6試合目で起こった“2度目の悪夢”に起因している。実戦復帰は7カ月半で当初の診断に従ったものだったが、練習を再開したのはその1カ月前。ハードな練習が日常生活の一部だったブライアントが、普通の人間から見て“突貫工事”を行ったのは手に取るようにわかる。
確かに左足のアキレス腱はつながっていた。しかし12月17日のグリズリーズ戦でブライアントは左膝を痛めた。今度は膝の下の脛骨の上部を骨折(脛骨高原骨折)。守備のスペシャリストとして有名だったトニー・アレンにボールをかきだされ、ルーズボールを争っている最中に膝を押さえてうずくまった。このあと「全治6週間」と診断されたが、2014年3月12日になってレイカーズはブライアントが残り試合もすべて欠場することを発表した。「年齢を考慮すれば復帰が早すぎた」。誰もがそう思った。
わずか6試合の出場に終わった2013年シーズンの屈辱を晴らすために、ブライアントは2014年シーズンでの完全復活を目指し、11月30日のラプターズ戦では31得点、11リバウンド、12アシストで通算20回目のトリプルダブルを達成。12月14日のティンバーウルブス戦では26得点をマークし、通算得点でマイケル・ジョーダン(3万2292)を抜いて歴代3位(現在は4位)に躍り出た。しかしこのあたりから両膝、かかと、腰、そして手術を受けた左足のアキレス腱が痛みだし、試合をたびたび欠場するようになった。2015年1月21日のペリカンズ戦では右肩の腱板(回旋筋)を断裂。これがこのシーズン最後のユニフォーム姿となり結局35試合の出場にとどまった。
満身創痍。平均得点は22・3ながらフィールドゴールの成功率はNBA19シーズン目で自己ワーストの37・3%にまで落ち込んだ。それが何を意味しているのかは、レイカーズのファンもうすうす感じ始めていた。2015年シーズンを前にしたプレシーズンではふくらはぎを痛めて2週間、戦列を離れた。デビューから20シーズン目。スポットライトを浴び続けてきたNBAのスーパースターに“黄昏(たそがれ)の時”が迫っていた。(敬称略・続く)
◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、北九州市出身。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。NFLスーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会には一昨年まで8年連続で出場。フルマラソンの自己ベストは2013年東京マラソンの4時間16分。昨年の北九州マラソンは4時間47分で完走。
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