日程決まった東京五輪、目指すべき姿探る 選手のために史上最も質素な五輪に

[ 2020年4月1日 05:30 ]

新橋駅SL広場に表示される東京五輪までのカウントダウンボード(撮影・西尾 大助)
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 延期された東京五輪の日程が来年7月23日開幕、8月8日閉幕で正式に決まった。ようやく目標が示されたことで選手たちの間には安心感が広がっているが、運営面では課題が山積している。新型コロナウイルスの感染拡大で五輪を取り巻く環境が激変する中、今までと同じやり方では国内からも世界からも支持は得られない。新東京五輪が目指すべき姿を探った。(編集委員・藤山 健二)

3月27日の紙面で指摘した通り、大会は丸1年のスライドで決着した。運営側、選手側双方のメリット、デメリットを詳細に検討すれば最初からこの案しかなく、IOCの結論も同じだった。

 ここから先、最大の問題となるのは巨額の追加経費を「誰が払うのか」だ。施設の保守管理、大会関係者の人件費など、1年延期に伴う追加経費は3000億円とも4000億円とも言われる。これまでは組織委と東京都が分担し、足りない分を政府が支援するという形で乗り切ってきたが、組織委にはもうそれだけの資金は残っていない。感染防止や経済対策として莫大(ばくだい)な出費が予想される政府や都にもその余裕はなく、IOCは最初から及び腰。金がなければ人も物も動かない。追加経費は真っ先に解決しなければならない難問なのだ。

 そしてもう1つ、リンクしてくるのが五輪に対する人々の気持ちの変化だろう。ネット上では「こんな時に五輪と言われても」「以前より五輪に関心がなくなった」という声が日に日に増えている。海外の報道では今回の日程発表に対し「非常識」と酷評する声すらあった。世界中が感染拡大におびえている中、五輪に関心が向かないのは当然で、経費の分担でもめればもめるほど「そんな金があるなら仕事を失った人たちの救済に回せ」という声が高まるだろう。対応を誤れば祝福されない五輪になってしまう恐れすらある。

 そこで提言だ。すでに多くの感染者、死者が出ていることを考えれば大会の規模はできるだけ縮小し、派手なセレモニーなども極力避けるべきだ。2度目となる「1年前セレモニー」はもういらないし、聖火リレーも小規模でいい。無駄なPR活動もいらない。追加経費は必要最小限に切り詰め、「選手のための五輪」という本来の姿に戻るべきだ。

 日程はスライドしただけだが、大会の内容は全く違うものでなくてはならない。史上最も質素な五輪でいい。選手の活躍こそが最大のハイライトという、原点の大会運営を。それこそが新たな五輪の「成功」につながるはずだ。

 《延期による課題》
 ☆会場&施設 43競技会場は使用可能か。不可能なら別会場開催や競技日程変更を強いられ、追加の賃借料も発生。プレスセンターとなる東京ビッグサイトの借り上げ延長は展示場不足問題を長期化させる。大会関係者の宿泊施設の再予約も必要。
 ☆選手村 大会後に高級マンションとして販売予定。入居開始は23年3月だが、改装が間に合わず入居が遅れれば補償問題になる。
 ☆職員&ボランティア 大会に備えて4月から職員を8000人まで増やした組織委には1年分の追加人件費が発生。約8万人のボランティアの中には来年社会人になる学生などもおり、改めて人数確保が必要。
 ☆チケット 購入者はそのまま利用できるが、延期が理由で観戦不可能なら払い戻し作業が必要。座席を使わない2歳未満の子供はチケット不要だったが、延期で2歳になった場合の措置は検討中。
 ☆選手選考 代表内定選手の扱いを含め、各競技団体は選考システムと強化戦略の見直しが必要になる。ベテラン選手は体力の維持、代表から漏れた若手は出場機会減少の問題が考えられる。
 ☆追加費用 組織委の武藤事務総長は3000億円といわれる金額について「そのぐらいで済めばいいが」。組織委に余裕はなく、東京都や政府は負担を免れない。
 ☆新型コロナウイルス 五輪開催は終息が前提だが、対策費用が新たに発生。延べ約1000万人と予想される観客が安全に滞在できる環境づくりは必須。

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2020年4月1日のニュース