馬術・大岩&武田 息子がつなぐ夫婦の夢、ウマ合う2人が目指す“アベック出場”

[ 2020年2月18日 10:00 ]

2020 THE PERSON キーパーソンに聞く

長男・陵宗くん(中央)と一緒に笑顔を見せる馬術の大岩義明と武田麗子
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 人馬一体になることが求められる馬術。総合馬術で3大会連続で五輪に出場している日本のエース、大岩義明(43=nittoh)と障害飛越で12年ロンドン、16年リオデジャネイロの両五輪代表の武田麗子(35=杉谷乗馬クラブ)は“夫婦一体”になって東京五輪出場を目指している。17年7月に結婚し、18年3月には長男が誕生。夫婦同時出場へ向けて拠点のドイツで子育てをしながら奮闘中だ。

 日本の馬術界をけん引してきた2人にとって、東京五輪は夫婦で臨む初めての五輪となる。

 武田「今までの2大会とは違って、子供がいる。環境は変わったけど、ママとして選手として、夢に向かって頑張っていけるんだ、っていう希望になりたい」

 特に大岩は、18年アジア大会で個人、団体で2冠。世界選手権団体では過去最高の4位で、表彰台に近い位置にいる。馬術は1932年ロサンゼルス五輪障害飛越の西竹一の金メダルが唯一のメダル。88年ぶりの快挙に期待がかかる。

 大岩「総合馬術では他の選手より経験が長いからリーダー的な存在になっている。世界選手権団体4位は満足していないし、団体でメダルを獲れるように頑張りたい」

 2人の出会いは10年。当時から互いが海外を拠点に活動しており、ドイツでの食事会で知り合ったという。現在もドイツに拠点を置き、東京ドーム約6個分の広大な敷地の中で、日々研さんを積んでいる。生活面では支え合い、競技面では大岩が武田のコーチ役を買って出て、厳しく指導。試合後は一緒にビデオを見て研究もする。

 武田「夫は遠慮がなくて細かい。バシバシ言ってくるけど、客観的に見てくれるのでとても助かる」

 大岩「気がついたことをお互いに言い合えるのが、夫婦で競技をすることのメリット。たまにやかましいと思うときはありますけどね」

 18年3月31日には長男・陵宗(たかむね)ちゃんが誕生した。東京五輪を前に、武田は選手人生の岐路に立った。

 武田「家庭を築きたい気持ちは凄くありました。でも周りに子供を抱えながら転戦しているお母さんもいなかったですし、初めての子なので不安しかなかったですね」

 午前中から昼すぎまで陵宗ちゃんを保育園に預けて、トレーニングを重ねる日々。保育園から風邪をもらってきて、武田にうつることも度々あった。コンディション調整も難しくなったが、そんな武田を支えたのが大岩だった。

 大岩「彼女の動物や馬に対する接し方や、競技をしている姿が凄く好き。子供が生まれたから競技に挑戦できなかった、と思ってほしくなかったし、僕自身も競技を続けてほしかった」

 武田が陵宗ちゃんをお風呂に入れている間に、大岩が夕飯の食器を片付ける。保育園に連れていく間に、部屋の掃除をする。武田が欧州内で試合の時には陵宗ちゃんと飛行機で移動している間、大岩は試合会場まで大きな馬運車を何日もかけて運転する。できることは何でもしてきた。

 大岩「選手である上に、子育てもしてもらっている。本当にありがたい。大変な状況でも、五輪に出場できる土俵まで来ている彼女は本当に凄い」

 武田「彼は大きなクッションみたいな人。何があっても受け止めてくれる安心感があって、常に尊敬と感謝の意を持っている」

 馬術の東京五輪代表が決定するのは6月中旬で、出場枠は障害、馬場、総合の各種目で3人馬ずつ。2人にとっては夫婦そろって出場することが最大の目標だ。過去に五輪に同時出場した夫婦も多くはないが、子育てしながらとなると、1960年ローマ五輪後に2児を授かって64年東京五輪に出場した体操の小野喬・清子夫妻の例しかない。

 大岩「夫婦で出ることは難しいけど、そんなことができたら特別な気持ちになる」

 武田「今のモチベーションは、私と夫が一つの大きな目標を掲げて努力している姿を息子に見せること」

 馬とだけではなく、パートナーとも心を一つに。馬術界の“おしどり夫婦”の飽くなき挑戦が続く。

 ◆大岩 義明(おおいわ・よしあき)1976年(昭51)7月19日生まれ、愛知県出身の43歳。10歳から乗馬を始め、明大では馬術部に所属。卒業後は競技を離れゴキブリ駆除の仕事に就いたが、00年シドニー五輪の開会式を見て競技への意欲が再燃し、翌年01年に渡欧し競技を再開した。総合馬術で五輪は3大会連続出場中。個人では16年リオの20位、団体では12年ロンドンの12位が最高成績。好きな食べ物は名古屋めし。1メートル70、67キロ。

 ◆武田 麗子(たけだ・れいこ)1984年(昭59)12月14日生まれ、神戸市出身の35歳。父・国男さんは武田薬品工業の元会長。12歳から乗馬を始め、甲南大卒業後はベルギーに渡り、現在はドイツを拠点に活動している。障害飛越で五輪2大会連続出場中。16年リオで個人戦26位、団体戦13位がともに最高成績。好きな食べ物はフライドポテト。1メートル51。

 ▽馬術 五輪の馬術競技は、馬場、障害、総合の3種目。男女の区別はなく、同一の人馬のペアで争われる。馬場は20メートル×60メートルの長方形のアリーナ内で、馬の演技の正確さや美しさを競う。障害はアリーナ内に設置されたさまざまな色や形の障害物を、決められた順番通りに飛越し、走行する。上記の2つに、水濠(すいごう)や竹柵などが設置されたコースを走る耐久(クロスカントリー)を加えた3種目の総合成績で争うのが総合になる。各国3人で構成される団体戦と個人戦が行われ、個人戦の成績が団体戦に反映される。各3人ずつ、合計9人が選出され、6月中旬に代表人馬が決定する。

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