【菊谷崇 キャプテン目線】攻撃も文化も「継続」、代表への憧れが最大のレガシーに

[ 2019年10月22日 09:00 ]

ラグビーW杯2019 20日南アフリカ戦分析

20日の南アフリカ戦の前半、タックルを受けながら姫野(左)にパスを出すリーチ(撮影・久冨木 修)
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 2011年ラグビーW杯日本代表主将の菊谷崇氏(39)が、20日の準々決勝・南アフリカ戦を「キャプテン目線」で細かく分析した。大苦戦したラインアウトは、強豪相手に「捕らせてもらえる位置」と「捕らせてもらえない位置」の違いに迫った。日本代表の躍進がもたらした功績にも言及した。

 南アフリカは予想以上にアウェーの雰囲気にのまれていた。FBルルーの普段はしないようなノックオン、CTBデアレンデの決定的な場面でのイージーな反則など、前半にミスが目立った。決勝トーナメントの重圧であり、前回日本に負けたことが原因の重圧だと感じた。

 とはいえ、さすがに守りが素晴らしく、日本は攻め手が見つからなかった。カギとみていたラインアウトでも大苦戦。13回中5回失敗した。キャッチした場面でも実は、相手にとって傷口になりにくい位置が多かった。

 展開するにしても、モールを組むにしても、ジャンパーを中間で捕らせるか、もしくは後方で捕らせた方が次の攻撃に移りやすい。ところが、敵陣に進入した場面では、“そこ”を読まれて奪われ、効果的なボールをバックスに供給できなかった。

 日本は前方へのスローだと“捕らせてもらった”が、この位置だとパスが長くなる分、相手守備が前に出て、バックスの展開で重圧を受けてしまう。ジャンパーの動きのテンポを速くしたり、ダミーを2段階で入れるなど、動きをより複雑にして、次に展開しやすい中間から後方で捕る必要があった。

 いい面もあった。前半、キックを交えた多彩な攻撃をしながら、連続攻撃をした。アイルランド戦、スコットランド戦でも「継続」が有効に働いた。当たりが強い強豪に対して、攻撃が最大の防御。今後の代表が進むべき道を照らしていた。

 これほどの人が日本代表のジャージーを着たことが、過去にあっただろうか。試合会場だけでなく日常でもそんな場面を目撃した。

 私が教えるラグビー・アカデミーの子供たちは、開幕前、テレビドラマの「ノーサイド・ゲーム」に夢中だった。それが、代表の活躍で「ジャパン、ジャパン」に変わった。ラグビーをしている少年、少女が胸を張ってジャージーを着て、学校に通学している。それがうれしい。社会が代表に憧れを持つようになったことが、最大のレガシー(遺産)だろう。(11年W杯日本代表主将、19年W杯アンバサダー)

 ▽日本―南アフリカ戦VTR 日本は体格で劣るFWがセットプレーで苦しみ、トライを奪えずに敗れた。開始早々に、自陣でスクラムを押し込まれ、先制トライを許す。田村がPGを決め、3―5で折り返した。後半は自陣での反則が増えて3PGで突き放され、さらに2トライを許した。南アフリカは屈強なFWを前面に押し出して得点を重ね、防御でも最後まで出足が衰えなかった。

 ◆菊谷 崇(きくたに・たかし)1980年(昭55)2月24日生まれ、奈良市出身の39歳。フランカー、No・8。御所工(現御所実)―大体大―トヨタ自動車―キヤノン。サラセンズ(英国)でもプレーした。世界規格の突破力、体を張ったプレーで信頼を得た。代表通算32トライは日本歴代3位でフォワードでは最多。11年W杯出場。17年度で引退。日本ラグビー協会リソースコーチ。

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