浮沈の鍵握るSO田村優 緊張から解き放たれ、世界1位をも欺け

[ 2019年9月22日 10:00 ]

<日本・ロシア>前半、突進する田村(撮影・吉田 剛)
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 ポーカーフェイスのままサラッと、なかなか印象的な言葉を発するなと思った。開幕ロシア戦から一夜明けた21日、宿舎ホテルで取材に応じたSO田村優は、試合を楽しめたか?との問いに「緊張して死ぬかと思った。緊張から解き放たれて、次の試合はもっと楽しめる」と言った。これまでラグビーに関心のなかった人たちも、何らかの形で目に触れる機会があるW杯。選手の言葉の持つ力が強ければ、多くの関心を引く契機になる。

 20日の試合、プレー面で印象的だったのは、キックキャッチから体を右にずらして1人を交わし、次のタックラーに対しては体を1回転させて抜き去ったシーンだ。スタンドオフとして精度の高いパスやキックばかりが注目されるが、実はボールキャリーをすればゲインを切ることが多い。足の速さやステップワークではなく、相手を欺くスキルと視野の広さが備わっている。

 田村がラグビーを始めた国学院栃木の吉岡肇監督によれば、ラグビーとサッカーで相手を抜き去る技術には共通点があるという。「フェイントを入れ、相手が背中を向けた方を抜く。サッカーでドリブルで抜くのと、ラグビーでタックラーを交わすのは似ているよね」。言うは易しではあるが、中学まではサッカー選手として生まれ育った愛知県内で名を馳せるほどの選手だっただけに、競技が変わってもその感覚が生きているということだろう。


 だからこそ、高校時代は育成する上で苦労した面があるという。「目の前の敵を交わす能力があるから、次々に交わしてそのうち袋小路に陥る。県レベルでは、それだけでスターになってしまうからね。理解させるまでが大変でした」。高いレベルになれば、スタンドオフのポジションでは、そうそう相手を抜けるわけがない。「抜けると思っても抜かないで仲間に託す。今はパス、キックを使っているよね。そこは成長したと思う」。田村の代名詞となっている手足の高度な技術は、実は交わす能力が高いゆえに磨かれた副産物だった。

 栃木での3年間のポジションは、SOに加えてフルバック。吉岡氏は「今でもFBはあると思いますよ」と言う。現在のディフェンスシステムでは、キック処理のために後方に下がる場面も多い。通常はそのまま蹴り返すが、ロシア戦のように自らキャリーをすれば、おそらく相手を欺くことができるだろう。

 9月28日には、史上初の8強進出に向けて、最大の山場となるアイルランド戦が控える。世界ランキング1位でありながら、謙虚に対戦相手を分析する緻密さを持つ相手も欺けるか。やはり日本代表の浮沈は、田村が鍵を握っていると言っていい。(記者コラム・阿部 令)

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