桐生、向かい風日本最速の10秒04でV「9秒台出したかった 悔しい」

[ 2017年4月30日 05:30 ]

陸上・織田記念国際 ( 2017年4月29日    エディオンスタジアム広島 )

男子100メートル決勝 レースを終えた桐生祥秀(右)
Photo By 共同

 8月の世界選手権(ロンドン)の代表選考会を兼ねて行われ、男子100メートルの桐生祥秀(21=東洋大)は向かい風(0・3メートル)の条件下での日本最速となる10秒04を出して優勝した。前日は“追い風予報”が出ていたものの、同条件だった予選も10秒16で、ともに向かい風に泣かされた。それでも今季3試合連続で10秒0台をマークし、日本人初の公認9秒台が間近に迫っていることを印象付けた。

 偉業達成は向かい風に阻まれた。桐生がゴールした瞬間、1万1000人の観衆は「10秒04」と、向かい風「0・3メートル」の表示に「あぁ」と落胆の声を漏らした。だが、一番悔しかったのはもちろん本人だ。

 「向かい風0・3メートルぐらいなら、9秒台を出したかった。本当に狙っていたレース。悔しい」

 それでも昨季までとの違いはいくつか見せた。最たる例がスタートだ。桐生の決勝の号砲反応タイムは0秒111で最速。苦手分野を払拭(ふっしょく)して飛び出すと、中盤から周囲をちぎってゴールを駆け抜けた。9秒台は逃したが、山県亮太の10秒06を抜き、向かい風での日本最速をマークした。

 決勝前はサブトラックで入念にスタート練習を行った。土江寛裕コーチの「パチン」と両手のひらで鳴らした音を合図にして両足を蹴る。前日も同じ練習をしており、同コーチは「音への反応のトレーニングをしてきた。(ヨーイドンの)ドンで反応するようにやってきた」と説明していた。

 耳からの神経伝達は、強化ポイントの一つ。10秒16だった予選は号砲反応タイムが0秒150で同組8人中6番目と低調だったが、決勝で修正。0秒111は、予選を含めた男子全レースで一番の数字だ。土江コーチは「数分前の追い風だったら、全然違う結果になっていた」と悔しがったが、トレーニングの成果は着実に表れた。

 「去年まで(10秒)ゼロ台を出すと、ダメージや重さがあったけど、ほぼなくなっている」と桐生。3大会連続で10秒0台を出したことも、走り終わった後の疲労の残り方も昨季までと違う。「オフにトレーニングも入れた。それが大きい」。次の“9秒台チャレンジ”は13日のダイヤモンドリーグ上海大会(中国)の予定。日本人初の公認9秒台は、いつ出てもおかしくない。

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2017年4月30日のニュース