王子谷、ついに初世界切符!リオ五輪落選原動力に奮起「最高でーす」

[ 2017年4月30日 05:30 ]

柔道全日本選手権 ( 2017年4月29日    日本武道館 )

<全日本柔道選手権大会>判定で優勢勝ちとなり優勝を決めた王子谷
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 今夏の世界選手権(ブダペスト)男子100キロ超級の最終選考会を兼ねて体重無差別で争われ、王子谷剛志(24=旭化成)が2年連続3度目の優勝を果たし、初の世界選手権代表に選出された。同大会で連覇を達成したのは04、05年大会を2連覇した鈴木桂治以来、12年ぶり10人目の快挙。また、大会後には全日本柔道連盟の強化委員会が開かれ、王子谷の他に100キロ超級の原沢久喜(24=日本中央競馬会)、100キロ級の羽賀龍之介(26=旭化成)が世界選手権代表に追加で決まった。

 地球の裏側で同学年の原沢が銀メダルを獲得した昨年8月12日、王子谷は自室のテレビにくぎ付けとなっていた。「(ゲームの)パワプロで選手育成をしてました」。あえてライバルの試合に目を背けた。それほどまでに悔しかったリオ落選を原動力に、初の世界代表をつかんだ。

 リオ五輪代表の選考レースは、15年12月のグランドスラム東京で7位に敗れ、早々と脱落した。16年1月には日本代表の強化合宿に、旭化成の一選手として参加。「死ぬほど走って、高校生と乱取り。一体何なのか、と」と屈辱的な扱いの差を受けた。それをバネに、昨年の全日本選手権も優勝。それでも気持ちが晴れることはなかった。

 昨年11月の講道館杯を機に、弱点だった引き手の強化に取り組んだ。専門コーチの教えを請い、ダンベルはマックス60キロだったのが90キロが上がるようになった。試合でどんな相手でも苦にしないように、相手を固定していた乱取りは、あえてやりにくい相手を選ぶようになった。

 東海大で3学年下のウルフとの同門対決となった決勝は、延長1分過ぎに相手の隅落としでもつれた際に唇を裂傷。柔道着は血に染まり「審判から“できないでしょ?あと2回血が出たらストップする”と言われたので攻めた」とスイッチを入れた。最後は7分すぎ、消極姿勢の相手に2つ目の指導が飛んで決着。インタビューでは「最高でーす!」と2度叫んだ。

 五輪2連覇、世界選手権7連覇の絶対王者リネール(フランス)が君臨する100キロ超級。王子谷は「リネールを倒せば東京に近づくのは分かっている」と言った。日本一の次は世界一。その先に「年齢的に最後の挑戦」という東京五輪代表の座があるはずだ。

 ◆王子谷 剛志(おうじたに・たけし)1992年(平4)6月9日、大阪府泉佐野市生まれの24歳。警察官の父・高次さんの影響で6歳から柔道を始める。東海大相模高3年時に高校総体、全日本ジュニア、世界ジュニアで優勝。世界ジュニアは翌年も連覇した。東海大から旭化成に進み、今年4月の全日本選抜体重別選手権で初優勝。得意は大外刈り。1メートル86、145キロ。右組み。

 ▼男子日本代表・井上康生監督 派手さはないが確実に勝利していく王子谷は優勝にふさわしい。世界のトップを達成できるようにともに闘っていきたい。原沢はここで(敗戦を)どう感じて、どう進むかが大事になる。

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