稀勢、平成以降の綱で最短口上 四字熟語なし22文字に強い決意

[ 2017年1月26日 05:30 ]

<稀勢の里横綱昇進伝達式>使者を出迎え口上を述べる稀勢の里(右から3人目)
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 新横綱が口上通り、シンプルに強さを求めていく。日本相撲協会は25日、東京・両国国技館で春場所(3月12日初日、エディオンアリーナ大阪)の番付編成会議後に臨時理事会を開き、全会一致で大関・稀勢の里(30=田子ノ浦部屋)の第72代横綱昇進を正式決定した。日本出身横綱の誕生は1998年夏場所後の3代目若乃花以来、19年ぶり。東京都千代田区の帝国ホテルで行われた昇進伝達式では、四字熟語は使わず少しかみながらも「横綱の名に恥じぬよう精進致します」と口上に決意を込めた。

 堂々とした相撲で初優勝と横綱昇進を果たした稀勢の里だが、伝達式では勝手が違った。「横綱の名に」と言おうとしたが「横綱の名は」と言って若干詰まった。そして「恥じぬよう精進致します」と続けた。伝達式後に口上の出来を聞かれると「ちょっとかんでしまいました。すみません」と苦笑いした。

 短い言葉だが、口上には稀勢の里らしさが詰まっている。大関昇進時の11年九州場所後の伝達式では「大関の名を汚さぬよう精進します」と平成以降では最も短い21文字に思いを込めた。今回は「大関」が「横綱」に、「汚さぬよう」が「恥じぬよう」に変わった程度。計22文字は横綱昇進時でも曙と武蔵丸の26文字を抜き、平成以降最も短いものとなった。「いろいろと悩んだが、ありのままの自分の気持ちを伝えようと思った」。横綱の名に恥じないということは、土俵上だけでなく土俵外でも力士の模範になるということ。覚悟がにじんでいた。

 これまで壁として立ちはだかってきたモンゴル出身の3横綱に肩を並べ、角界は17年ぶりの4横綱時代となる。昨年は初の年間最多勝となったものの、優勝1回はまだまだ見劣りする成績。次の目標を聞かれると「来場所優勝ですね」と早くも連覇宣言が飛び出した。先代師匠の元横綱・隆の里は、新横綱だった83年秋場所を全勝で制して連覇を果たした。新横綱の視線は、亡き先代師匠と同じ道を見据えていた。

 これまでは自分の苦しい胸の内を明かすことは少なかった。この日は4大関で唯一優勝がなかった時のことについて「どこかに歯がゆさもありました」と吐露した上で「自分を信じてきてよかったなと思う」と話した。

 これからも心の支えにしていくのは亡き先代師匠の教え。「感謝しかない」という親方からは大関昇進前に「横綱になれば見える景色が違う」と言われ続けた。ようやくその地位にたどり着き「先代の師匠に出会わなければ今の自分はない。目に見えないものも見えてくると思っている。見えるように成長していきたい」と言い切った。

 「自分は前に出る力と言われ続けてきた。それを信じてやるしかないと思っている。もっともっと稽古して、もっともっと強くなって、皆さんに恩返しできるように頑張っていきたい」。15年前に入門したときから一貫して変わらない強さの追求。横綱になっても信念は曲げず、シンプルに勝利を求めて戦い続けていく。

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2017年1月26日のニュース