スピード社に負けない!日本競泳界に救世主

[ 2008年5月11日 06:00 ]

この素材が日本競泳陣を救う!誇らしげに自社製品を掲げる山本化学工業・山本社長

 水着問題で揺れる日本競泳界に、救世主が浮上した。日本水泳連盟から30日までに水着の改良を求められている国内3社に、山本化学工業(本社大阪市)が素材を提供することが10日、分かった。複合特殊素材メーカーの同社は、世界新を連発している英スピード社に負けないと自信満々。米航空宇宙局(NASA)と共同開発したスピード社に、従業員73人の企業が真っ向勝負を挑む。

 山本化学工業・山本富造社長(49)の自信は本物だった。「日本製より英国製がいいと言われるのが頭にきていた。絶対、スピード社より速いです」。NASAとの共同開発を売り文句に、世界トップのブランド力を誇るスピードを向こうに回し、ナニワの技術屋の熱い血が沸騰した。

 競泳界では無名の同社だが、トライアスロンやオープンウオーター(遠泳)の世界では知られた名前だ。6年前から世界のメーカーの依頼を受け、アウトドア用の水着素材開発に着手。表面に水の分子を吸いつけるラバー加工を施し、低抵抗性を実現した「バイオラバースイム=SCSファブリック」を完成させた。

 スピード社製は撥水(はっすい)性の高さで有名だが、山本化学工業の素材も水が全く浸透しないため、水中でも重さが変わらないという。この素材は既にニュージーランドのブルーセブンティー社が使用して商品化。国際水連(FINA)の認可も受けた。4月上旬に関大で行ったテストでは、選手から「体が浮く感じがすると言われた」と森本雅彦執行役員。スピード社と同じように浮力を感じる水着だという。

 昨年10月に日本水連と契約するミズノ、アシックス、デサントの3社に持ち込んだ際には断られた。だが、今回は逆に3社から別々に素材の提供を求められ、9日にテスト用素材の納品を済ませた。「五輪で、日本の技術屋は大したものだと思ってもらえれば、それだけでいい」。山本社長以下、従業員わずか73人の大阪の町工場が、世界に挑む。

 ≪各社 本格始動≫当初、新たな素材の開発、使用に消極的だった国内3メーカーは、日本水連が30日を水着改良の期限と設定し、目標がはっきりしたことで本格的に動きだした。3社が五輪用に開発した水着は、親水性や柔軟性、フィット感などを重視したもので、撥水性を前面に出したスピードとは対照的だった。3社は既に山本化学の素材を入手。デサントの担当者は「あらゆる可能性を探る中での1つの素材」と説明し、アシックスの担当者は「商品化も検討している」と前向きだった。

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2008年5月11日のニュース