東京Vの新副社長 栗田大輔氏 異色の経歴武器にJリーグに新風を
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【蹴トピ】今年2月、東京Vに異色の経歴を持つ副社長が誕生した。昨年まで10年間、名門・明大サッカー部の監督を務めた栗田大輔氏(54)だ。22年6月までは清水建設で管理職を歴任。東京Vでは代表権を持ちクラブ経営の先頭に立つ。二足のわらじを履いていた栗田氏に過去の経歴や今後のクラブ経営などについて聞いた。(大西 純一)
24年の無敗制覇を含め、明大を計5度優勝に導くなど多くの栄冠を手にした栗田氏だが、ビジネスマンとしても得難い経験をしてきた。明大を卒業した93年4月に大手建設会社の清水建設に入社。主に営業マンとして挑戦できることは何でもやってきたという。
苦い経験も糧にしてきた。横浜支店に勤務していた時のこと。デベロッパーから「この土地が入ったら買うよ」と、大規模な開発の話を持ちかけられた。まだバブルの余韻が残る頃、早速登記簿を取り寄せ、所有者や借地人、借家人を調べて売買交渉した。2年ぐらいかけてようやく全ての土地を買収したが、デベロッパーが「買わない」と手のひらを返した。何とか別の開発会社を紹介してもらい、売却して数十棟の戸建てができて事なきを得たが、逆にそういった経験が後に生きた。
営業マンとして情熱を持ってチャレンジを続け「人と人の縁ができて、最後には“あなたに発注する”となることが営業としての醍醐味(だいごみ)だった。会社というバックボーンがあっても、最前線の営業マンが気に入られないと信頼は得られない」と当時を振り返る。
栗田氏が清水建設に入社した93年は、くしくもJリーグ開幕年だった。数年前からサッカーに脚光が当たっていたが、栗田氏は「クリエーティブな仕事や企画がしたかった」と志望した広告代理店ではなく、実家が鉄骨会社を経営していたこともあって、建設会社を目指した。「同じ設計図でも、建てる人の思いや工事の質が違えば違ったものになる」。何もないところからビルを建てる建設会社の営業も、無から有を生み、そこに人々の息吹ができるクリエーティブな仕事だ。
そこで業界トップの売り上げを誇っていた清水建設に入社。営業に配属され、いい上司にも恵まれた。「何でもやってこい。責任は取るから」。尻を叩かれ、積極的に顧客に飛び込んでいったことが人生を変えた。
サッカーとの出合いは父・穣さんの影響だった。静岡県の名門・清水東サッカー部で58年の富山国体で全国優勝、1年後輩には68年メキシコ五輪で銅メダルを獲得した杉山隆一さんがいた。父に連れられて清水東の試合を見に行くうちに「将来は清水東でサッカーをやりたい」との思いが芽生えた。静大付属小には少年団がなかったので、弟が通っていた江尻小のチーム江尻SSに特別に入れてもらいサッカーを始めた。
静大付属中時代は選抜にも選ばれ、第1志望の清水東に入学。主に右ウイングを務めた。3年時は高校選手権の県大会決勝で清水商に敗れて、全国大会出場の夢はかなわなかった。決勝は2日前の紅白戦で控え組。2年生が先発し、ベンチスタートとなった。10分過ぎに「アップしろ」と指示が出て、ベンチの横で体を動かし始めたが、最後まで出番はなかった。途中でベンチに戻り、膳亀監督に怒られた。
試合後、3年生が集まって“お疲れさま会”を開催したが、みんなに気を使わせてしまったのではないかと思った。「そもそも実力がなかったこと、そして日々の取り組みから、大事な試合で信頼を置いて起用しようと監督が思う選手ではなかったのだろう」。この時の苦い経験が社会人として、サッカー指導者として大きく成長させたという。
栗田氏が副社長に就任して間もなく2カ月だが、あいさつ回りや社内ミーティングで忙しい日々を送る。東京Vは昨季、16年ぶりのJ1で6位に食い込んだが、観客動員やスポンサー収入の増加など、やるべきことが多くある。
「ビジネス視点でやればできることはいっぱいある。若いスタッフも多く、みんなが自信を持って働ける環境をつくっていくことが必要。管理主義になるとチャレンジができず、革新的なものができない。でも、攻めばかりでは支出が膨大になる。どうバランスを取るか」
Jクラブをスポーツビジネスの視点から見ると、チケット販売やマーケティング、グッズ販売などが横軸でしっかりつながって連動している。「チームとビジネスサイドが一体となって進むことが大切で、クラブとしてさらに成長するためには、過去の成功と失敗を振り返りながら、より戦略的に取り組まなければならない」。昨季は目の前のことを追いかけるだけで精いっぱいだったと推察する。
「縦割りで考えるだけでなく、俯瞰(ふかん)的に全体を取りまとめるプロデューサーも必要。サッカー界の常識が世の中の常識とマッチしていないところも少なからずある」。ビジネスマンの経験から分析した。
東京Vはアカデミーが充実し、女子のベレーザやサッカー以外の競技をやっている総合スポーツクラブとしての魅力もある。「ヴェルディの強みは何か?ヴェルディとは?をみんなで落とし込んでいきたい」と展望を語る。
明大監督を辞任することには「辞める理由はなかった」というが、「長くいると成長を止めることにつながる」と新たな挑戦を選んだ。明大監督時代は人間性にも重点を置いた栗田氏。「サッカーがうまいからいいでしょう、という論点は違う。スポーツから何が世の中に与えられるか」。Jリーグも新たな風を吹かせられるか注目だ。
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