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小倉勉氏 千葉&代表でオシム監督の下でコーチ、忘れられない「お前は指示を出すな」

[ 2022年5月5日 05:30 ]

06年代表でのオシム監督(右)と小倉コーチ
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 J2千葉と日本代表でオシム監督の下でコーチを務めた小倉勉氏(55)が、恩師への思いを寄せた。

 初めて会ったのは2002年W杯の時で、オシムさんはFIFAの仕事で来日して、札幌と仙台の試合を見ていた。私も市原の監督だったベングロッシュ監督と一緒にW杯の試合を視察していて、それで会った。第一印象は体が大きくて眼光が鋭いことだったが、まさか一緒に仕事をすることになるとは思ってもいなかった。

 思い出すのは、オシムさんに「お前は指示を出すな。へたになる」と言われたことだ。ある時、技術のある若手選手を指導していた時のことで、オシムさんはその選手は選択肢をたくさん持っているので判断が遅くなり、ミスをしていると見抜いた。私がミスだけ見て指示していたので、現象だけ見て指導するのは良くないと思ったのだろう。私も選択肢を増やさないといけないと感じたし、選手に対するアプローチもそれまでの概念とは違っていた。

 指導は中心選手から若手までだれにも分け隔てなく行った。練習も、これとこれをやって、試合に備えてという考え方ではなく、試合で起こりそうなことから逆算していた。練習のための練習にならないようにしていた。サッカーも「なぜDFの選手が点を取ってはいけないのか、なぜ前の選手が守備をしてはいけないのか」などといつも問いかけをしてきた。実際、千葉ではMF阿部勇樹やDFストヤノフが点取っていた。

 そうやって常にサッカーのことを考え、5年、10年先を見据えていた。コピーはいいが、まねをしてもオリジナル以上にはならないという考え方だった。ひとりの人間として魅力があり、そこがみんながほれたところだろう。(元ジェフ千葉コーチ、元日本代表コーチ)

 ◇小倉 勉(おぐら・つとむ)1966年(昭41)7月18日生まれ、大阪府出身の55歳。摂津高―天理大。同志社香里高でコーチとして指導のキャリアを始め、ドイツでも指導経験を積む。92年から市原(現千葉)でコーチや強化などを務め、06年からA代表のコーチとしてオシムジャパン、岡田ジャパンを支え、4強入りした12年ロンドン五輪ではヘッドコーチ。その後、大宮監督などを歴任。

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2022年5月5日のニュース