【川崎Fを支える人】篠田洋介フィジカルコーチ 体調管理に心の体調もチェック 変化に敏感に対応
ACLの1次リーグが、いよいよ15日に開幕する。川崎Fにとって9度目の挑戦で目指す悲願のタイトルだ。集中開催の地、マレーシアは高温多湿の上、試合は中2日で6試合。ハードな日程を戦い抜く選手はもちろん、その陰にはクラブで働く多くの人の努力がある。今回は3人の「支える人」を連載で紹介。最終回はフィジカルコーチの篠田洋介氏(50)。
篠田氏は“体を整える人”だ。連戦でもタフに動ける土台作り。大会中のケア。選手の体に寄り添い、サポートする。シーズン開幕から約2カ月が経ち「選手のコンディションは徐々に上がってきている」と手応えを口に。連戦等で多少の個人差はあるものの「チーム全体を考えれば問題はない」と話した。
じわっとかきはじめたら最後、あとは流れ出るように汗があふれてくる。マレーシアは高温かつとても多湿。13日に取材対応した鬼木達監督も「6試合通してのダメージは、なかなかのものになるのかなと想像しています」と話すほどだ。その上、試合は中2日で6試合。ハードな日程が待ち受ける。
しかも6試合のうち2試合は、現地時間で午後10時のキックオフ。いち早く独特の気候に慣れることはもちろん、いざ大会が始まった後は、試合ごとの間隔が短い中で選手の体調をいかに早く整えるかが大切になる。篠田氏は「どのように疲労を回復させていくかというところに去年から重きを置いている」と明かした。
疲労の回復度を知る上で計測するデータがある。まずは体重。選手には朝昼晩と1日3回体重計に乗ってもらい、増減を確認する。検尿も行う。「結果に基づいてもう少し水分取ろうよとか、足りているよとか、コミュニケーションを図ります」。試合中に汗をかけば体の水分量は減少。脱水症状を早期発見する目安にもなる。
また、体を整えるために“心の体調”にもアプローチする。唾液を毎日採取。ストレスを感じたときに上昇する「アミラーゼ」という物質の数値を測る。仮に高くても練習や試合には影響しない。あくまでも「一つのコミュニケーションツール」。選手のストレスを敏感に察知し、改善に導くためのきっかけ作りにする。
例えばジェットコースターが苦手な人が乗っているときのことを想像すると、数値は上がる。元々の使い方は違うというが、篠田氏はこれをキャンプ中や海外遠征時など、普段とは異なる生活環境によってストレスがかかりやすい状況で導入している。ストレス自体に気がつけば、会話の中から解消につながる糸口を発見しやすい。
「枕が変わったから寝られない選手がいたら、こうして寝ようよとか、いろんなコミュニケーションからフィジカル的なコンディションにプラスにできることもある。ご飯が口に合わない選手もいたりする。その(数値の)中から拾えるようなことがあるので、一つのツールとして使っているような形です」と活用法を語った。
このように大会中に選手のコンディションを保つ一方で、タフな戦いを乗り切るための日々の土台作りも篠田氏の担当。フィジカル面で強化している点について、「ここ数年はどれだけ試合の中で強度の高い動きを継続してできるかに取り組んでいる」と話す。チームが目指すスタイルに沿う形で、体づくりを行っていく。
「練習がメインなので、練習の中で試合に近い動きや強度が出せるか、それがまずは一番」。その上でプラスアルファで4、5分のメニューを篠田氏が付け加えることもある。今年はトレーニングの最後に走り込むメニューを去年よりも増やした。連戦の場合は避けるが、そうでない場合は週に1度ほど行っている。
中盤の顔ぶれはここ最近で特に変化した。高強度の走りを求めるのは、現在いるその選手たちの良さを生かす狙いもある。「どの選手もいい面を持っている。それをより引き出すために、ちょっとした体の使い方のパワーであったりスピードを定期的に入れていくのがチームにプラスになのではないかというところが大きい」と効果を期待する。
集中開催のACL。選手は対戦相手とも疲労とも戦いながら、異国の地で6試合を戦い抜く。「チーム全体で向かっていかないと勝てない大会。今何人かケガ人がいますけど、そういった選手も含めて、できるだけチーム全体がいいコンディションで臨めるようにサポートできればいいなと考えています」。一緒に汗をかくスタッフに支えられ、チームは強くなる。
◇篠田 洋介(しのだ・ようすけ)1971年(昭和46)9月19日生まれ、栃木県宇都宮市出身の50歳。米国の大学、大学院でコンディショニングを学び、横浜のフィジカルコーチなどを経て17年から現職。家族は妻と2男。(波多野 詩菜)=おわり=
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