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梅山修氏 J2新潟・鈴木が見せたストライカーとしての高い質

[ 2021年10月12日 09:41 ]

山口戦で弟の大輔(右)と競り合う高木
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 【元アルビ・梅山チェック】「今シーズンの中で決して良いプレーとは言えない試合の一つでした。」開口一番そう振り返ったアルベルト監督。ボール保持率49%対51%、シュート数8対11、さらにコーナーキックでは3本対6本など、データ的にも山口が上回った。これまでほとんどの試合でボール保持率とシュート数で相手を上回ってきた新潟が、監督交代後2試合目の山口を押し込む展開になるだろうという勝手な予想は全く逆の展開となった。

 試合前に山口の名塚監督は「新潟は良いチームだが、自由にさせないようにしたい」と話しており、その方法に注目した。具体的には前線に位置する3人が新潟の4人のDFにプレッシャーをかけてパスコースを限定し、それに連動する形でMFは短いパスを、DFは長いパスに狙いを定めることで新潟のビルドアップをさせない事にあった。

 今季は特にこうして前から新潟の最終ラインにプレッシャーをかけてくる相手に苦戦してきたが、この試合でもそのプレッシャーを外すことができず、苦戦した最大の要因となった。また本来、相手MFとDFの2ラインの間でボールを引き出すことのできる新潟MF陣も、相手の前からの規制とそれに連動するMFとDFによって、思うようにはパスをもらえなかった。

 全体としてはうまくいかない時間が多かったが、この日唯一のゴールは素晴らしかった。自陣で舞龍行が相手FWに競り勝って跳ね返したボールをハーフウエーライン付近で鈴木が競り合う際、三戸と高木はすでにそのサポートに動き出していた。いち早く反応した高木は逆サイドで同じく長い距離をスプリントしてきた三戸へパス。右足のアウトサイドでDFラインの背後に繰り出されたパスは、相手ゴールから遠ざかっていく回転がかかっていて、それはつまり飛び出した相手GKからも離れていくボールとなった。飛び出してきたGKを三戸がワンタッチで交わすことができたのは、このパスの質がアシストしたものと言える。

 もし、その回転をかけていなければ相手GKが間に合っていた可能性は高い。そして再びゴール前に走り込んだ鈴木が決めたのだが、この時、意図的に遅れて走り込むことでフリーになったことと、確実にボールをとらえるキックは、鈴木がストライカーとしての質の高さを見せつけたと言って良いだろう。

 残り9試合でJ1昇格圏との勝ち点差は10。サッカーはプレーするもの。悲壮感よりもこの追いかける痺れる展開を楽しんで欲しいと思う。(元アルビレックス新潟DF)

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2021年10月12日のニュース