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無所属選手が羽ばたく異色のクラブ「FKコバルト」 全信俊オーナーの果てしなき挑戦

[ 2021年5月19日 06:00 ]

チームの練習着はなく、各自のものを着用しているFKコバルトの選手たち。左端がオーナーの全信俊さん
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 今年1月、元日本代表DF名良橋晃さんの息子である、名良橋拓真がJ3の藤枝MYFCに加入することが発表された。20年春の阪南大卒業後、空白の1年間を経てプロ入り。その浪人期間に力を磨いたのが、大阪社会人リーグ2部のFKコバルトだった。

 プレー環境を失った選手に対して、新たな所属先が決まるまで練習場所を提供するのがFKコバルト。従来の社会人チームとは、明らかに一線を画している。清掃業を主とした会社を営みながらオーナーを務める全信俊さん(39)は「Jリーグを目指すわけじゃないけど、いろんな事情を抱える若者にもチャレンジさせたい」と語る。

 練習の参加費は無料。クラブにホームページなどはなく、多くが口コミを聞いて連絡を入れてくる。中学生や高校生から社会人までと年齢層は幅広く、国内外で新天地を探す若者が集まり、週3回、主に茨木市内で午前中にトレーニングを実施している。移籍先が決まり1週間で巣立つ者もいれば、年単位で所属している者もいる。

 かつて6年間にわたって大産大サッカー部でヘッドコーチなどを務めた全信俊さん。退任後の15年に「SORA SELECT」という個人会社を創業し、当初は人材紹介などのビジネスを展開した。その後に韓国からの留学生のためにサッカーの指導を開始すると、練習場所がなく夜間にボールを蹴っている若者がいることを知り「日本の子も受け入れてチームにしよう」と構想が持ち上がった。18年にFKコバルトが創設され、4年目を迎える今季は国内外での指導歴を誇る高石誠氏が監督を務める。

 クラブの運転資金は年間で約150万円。そのほとんどを「SORA SELECT」からの持ち出しでやりくりしている。「楽な金額ではないですけど、飲み代やゴルフに使うよりも嫁は喜びますよね」。働きながら国内外のチームを探す者やコロナ禍で海外留学が頓挫している者。さまざまな境遇にある選手とともに、全信俊さんの挑戦は続く。(記者コラム・西海 康平)

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