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高校&大学初の合同トライアウト 民間企業の奔走

[ 2020年8月19日 09:00 ]

熊本・大津町運動公園で行われた合同トライアウト
Photo By スポニチ

 ピッチ上に、バラバラのユニホームが入り交じる。スタンドからは、メモを片手に多くのスカウトの熱いまなざしが送られた。8月3日、熊本・大津町運動公園で行われた高校3年、大学4年生対象の合同トライアウト。主催した株式会社リトルコンシェルの代田洸輔氏(33)は、目前に広がる光景に目頭を熱くした。

 「一時は中止も考えていた。それでも、地域の理解もあって開催することができた。“学生のために”を合い言葉に、なんとか開催することができて良かった」

 新型コロナウイルスの影響で全国大会が相次いで中止。例年、進路は夏の実績で決まるため、選手たちは重要なアピールの機会を奪われた。もともと、同社でスポーツ大会の運営実績があった代田氏は、筑波大の小井土正亮監督(42)から学生の厳しい状況を聞き、背中を押される形で独自の救済策へと動いた。

 ただ、開催へのハードルは高かった。日本サッカー協会ではなく、民間企業の主催。「うちの会社を知らない人が多かった。何これ?って賛否は分かれました」と代田氏は振り返る。それでも、筑波大の小井土監督らが懸命に大学、高校の指導者へ向けてPR。「先生方のバックアップがなければ、開催はできなかった」と感謝した。

 コロナ禍の影響で一部延期となったが、九州、関西、中国の3地区で分散開催。対象地域の選手約430人が参加し、Jリーグら社会人、大学のスカウトは約130人が集結した。一般的に県大会以上に出場して初めてスカウトの目に懸かることが多いが、今回はほとんどが監督推薦のため無名選手もいた。スカウトからは「こんな選手いたのか」と、驚きの声が上がったという。

 日本プロサッカー選手会が主催するプロ選手対象のトライアウトは毎冬実施されてきたが、高校生や大学生を対象としたものは今回が初めてだった。来年以降も開催を求める声は多いが、代田氏は言う。「本来であれば当たり前にサッカーができて、当たり前にスカウト活動ができて、当たり前に保護者が観戦できる。そんな日常に戻るのが1番」。

 コロナ禍で大会中止が相次いでいる今、独自の救済策を夏までに実現できたのは、民間企業だったからかもしれない。(記者コラム・清藤 駿太)

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2020年8月19日のニュース