“心眼”で戦うサムライブルー 「ブラサカ」静寂の中での激闘 チャント、鳴り物一切なし

[ 2019年3月21日 10:30 ]

試合を振り返る川村怜主将
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 サッカー日本代表の愛称「サムライブルー」。武道では見えないもの、ものの本質を心の目で見るというが、まさに“心眼”で戦っているサムライたちがいることをご存じだろうか。「ブラインドサッカー日本代表」は現在、東京・品川区立天王洲公園を会場に8カ国が頂点を争うワールドグランプリで世界を相手に激闘を続けている。

 ブラインドサッカー(通称ブラサカ)とはGK以外は全盲の選手がプレーするパラリンピック競技だ。ピッチサイズは40メートル×20メートルでサッカーやフットサルと違うのは音がするボールを使うということ。耳でボールの位置を把握し、声でコミュニケーションをとって相手ゴールに攻め込んでいく。

 記者はサッカー、フットサルなどボールを足で扱う球技は多く見てきたし、プレーもしたことがあるがブラインドサッカーはワールドグランプリが初めての観戦だった。どんなサッカーが見られるのか。取材といいながらも一サッカーファンとして楽しみでならなかった。

 「ボール見えてるんじゃないの?」。これがブラサカ初観戦で初めて口を突いた言葉だった。選手がアイマスクを着用しているのは分かっているのに。

 足下にボールを感じると、そこからは両脚で小刻みに、まるでバルセロナのメッシのようなボールタッチでスルスルと相手の間を通り抜けていく日本代表選手の姿にそんな感想が出てしまった。

 開幕戦となった19日のロシア戦。のっけから背番号10のプレーが飛び込んできた。驚いたのが主将を務める川村怜(30)だった。1人だけピッチを上から俯瞰(ふかん)しているかのように正確なポジショニングから相手ゴール前まで攻め上がると、決定機を何度も演出。ノーゴールに終わった川村主将は「相手の足に引っかかってしまった」と反省するが、プレーの質は11人制サッカーと何ら変わらない。数分間プレーを見ただけで川村主将の虜(とりこ)になった観客は多かったと思う。

 サポーターの応援も独特だ。Jリーグでは当たり前のチャントも鳴り物も試合中は選手の邪魔になるからと一切なし。試合前やタイムアウトなどプレーが切れたときには「NIPPON!」の大合唱となるが、基本的には静か。静寂の中で選手の息づかいと体がぶつかり合う音がダイレクトに伝わってくるのはとても新鮮だった。

 選手たちのすごさを知りたければ体験してみるのも手だ。日本ブラインドサッカー協会の広報担当者によれば、毎週体験型のワークショップが開催されているほか、小学校などでコミュニケーションの教育としてもブラサカが用いられているという。

 今大会は8チームが2組に分かれて1次リーグを行い、上位2チームが準決勝(23日)へ進出。決勝は24日に行われる。日本は第2戦(20日)のコロンビア戦を川村主将の2ゴールで2―1で勝利し1勝1分けの勝ち点4と勢いづいている。前日ノーゴールの鬱憤(うっぷん)を2ゴールで晴らすあたり、さすが10番だ。

 まだ見ていない人には選手たちの“見えない激闘”を見届けて欲しい。そして20年東京パラリンピックで間違いなく盛り上がる「ブラサカブーム」に乗り遅れないよう、いまのうちから会場に足を運んでおくことをオススメします。 (記者コラム・河西 崇)

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