東京Vホワイト新監督 目指すのは“勝つサッカー”「システムを保ちつつ自分たちを表現」
東京Vのギャリー・ホワイト新監督(44)が今季の抱負やチーム作りについて語った。
―まもなく開幕ですが、チームづくりは順調ですか。
ホワイト監督 選手たちは、私がやってほしいと思っているアイデアがわかっている。最初2、3週間は手探りの部分があったが、みんなでひとつのリズムつくっていこうとしてきた。ここまで順調に来ている。言葉の壁があるので時間は掛かるが、選手はスタッフが慣れるより早く慣れている。
―どんなサッカーを目指しているのですか。
ホワイト監督 ひとことでいうのは難しいが、システムを保ちつつ自分たちを表現する。攻撃的で、負けないというより、勝つサッカーをすることが重要だと思っている。DFの構成や理解も大事で、エネルギーも必要だ。ボールを奪う、キープする、そのボールを展開する。ポゼッションといっても、目的のあるポゼッションが必要、ゴールを奪うことが大事でその目的を大事にしたい。選手にも話しをして、コミュニケーションを取ってほしい。いろいろなシナリオを渡して、これだよという答えをひとつだけは駄目だ。サッカーがダイナミックに動いている中で、選手にはいろいろな状況ある中で直すところは直してほしい。選手には責任も生じる。
私はSOULと言っているが、Sはサクリファイズ(犠牲)、Oはオナーシップ(責任)、Uはユニティー(ひとつになる)、Lはレガシー(記憶に残る)。それができれば楽に戦える。
―ヴェルディは伝統的にブラジルスタイルでした。そこは。
ホワイト監督 歴史的なところからいうと、100年以上前にブラジルでサッカーを広めたのは英国人。英国とブラジルは関係がある。それに英国は世代別ではいい成績を収めている。現代サッカーはポゼッションが主体になっているが、「英国といえばロングボール」のイメージはもうなくなっていて、英国人のサッカーに対する考え方も変わってきている。1980年代はそうだったかもしれないが。
ただ、ポゼッションといっても、目的があるポゼッションが重要。W杯ではパスが多いチームほど勝てていない。どれだけ目的のあるパスが入れられるかが大事で、そこをやっていけたらと思っている。
―22歳で指導者になりました。
ホワイト監督 家族が全員、サッカーが大好きで、祖父はサウサンプトンでユースチームのリーグをつくった。両親もサッカーが好きだし、きょうだいもサッカーをしていた。サッカー以外選択肢はなく、違うことを選んだとすれば、それは「サッカーが下手だから」ということ。僕もプロが夢で、16、17歳の時に実現した。でも、チームでそれほど必要とされなくなって、レベルを下げて、オーストラリアに行った。22歳のときにまだ契約更新はできたが、長い目で見てそれが最終的にどうなのかと疑問に思うところもあった。ベストプレーヤーになれないなら、ベストコーチになろうと。難しい判断だったが、32歳で引退した選手と比べて、同じ年齢になった時に、10年以上のアドバンテージがある。FAでコーチの講習をレベル1から全部受けた。
―最初に監督として就任したのが北中米のバージン諸島代表でした。
ホワイト監督 年齢的にもイングランドでは、なかなか指導者になるのは難しかった。92のプロクラブがあるが、大きいクラブは代表に呼ばれたような選手しかコーチになれなかった。それで、海外でやろうと。まだファクスの時代で、売り込みの手紙を書いて、それを海外のサッカー協会にファクスした。ロンドンのファクスがある店に行って、34本のペンを使い切って、202カ国に送った。途中で切れたり、お金が足りなくなったりたいへんだった。その中で2つから返事が来た。200通は無視、1%だけだよ。そのひとつがバージン諸島だった。まだ25歳だったが、お陰でその後は年齢に関係なく仕事をすることができた。
バージン諸島代表ではチームが勝ち続け、それまで勝てなかったチームにも勝ち、FIFAランクも過去最高まで上がった。すると、バハマから声がかかり、もっとスポーツが盛んなところで仕事をすることができた。ここでは協会のテクニカルディレクターになり、育成にも関わった。ここでの7年間で、コミュニケーションやコーチとしてのあり方も学んだ。間違えることはしかたないが、2度はいけないなどだ。その後、米国MLSのシアトルでテクニカルディレクターになった。ワシントン州に1500万人の選手が登録されていて、その中から選手を選ぶのも勉強になった。
―指導する上で大事にしていることは何でしょうか。
ホワイト監督 コミュニケーション。これは選手としてだけでなく、人としてもしっかりやらなければいけない。
―日本人の特性はどこだと思いますか。
ホワイト監督 日本の選手は、こっちからリードしないといけない。決まった答えを渡すのが適している。それは教育から来ているのかもしれない。A、B、Cの3つの答えしかない中で、ヨーロッパは考えて出さなければいけない答えが多い。選手にはこっちから教えていかないと行けないかと思っている。いいことは耳を傾けてくれるものだ。
―どうすればチームは強くなると思いますか。
ホワイト監督 選手がやりたいという気持ちを出すこと。モチベーションも大事だ。それぞれあると思うが、みんなが持てる共通のモチベーションを探さないといけない。東京Vでは、ひとつはJ1にいくこと。これは皆が同じモチベーションを持てる。それに今年の選手は経験ある選手多い。選手はこの状況をよくわかっている。クラブの歴史もある。また復帰してきた選手もいるし、ユースから上がった選手もいる。みんな緑色に染まった選手が多いのもモチベーションになる。
もっとアグレッシブになること。川崎Fと練習試合をしても、僕たちのポゼッションはかなりレベルが高かった。ただ、目的としてボールを持って前に行けたのに、ポゼッションして自分たちで問題をつくった。最後のアグレッシブさは追求しないといけない。
昨年はポジションを固定されていたので、選手が動ける範囲やクリエイティビリティーが欠けていた。今年は昨年のように攻撃で人数制限や、ポジションの限定はない。僕はそういうやり方ではやりたくない。試合は勝ちに行かないと。負けないようにするより勝ちにいく。前に行く時の人数は多い。昨年までの習慣を崩そうと思っている。
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