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日本代表専属シェフ、福島・広野町で決意の開店 岡ちゃん「いい決断」

[ 2016年3月12日 11:05 ]

「くっちぃーな」で開店準備をする西さん

 東京電力福島第1原発事故で一時、全町避難した福島県広野町に、震災5年を前に複合商業施設「ひろのてらす」がオープンした。スーパーのイオンも入るその一角に、同町在住でサッカー日本代表専属シェフの西芳照さん(54)がフードコート「くっちぃーな」を出店した。

 「“食”は“人”を“良”くするって書きますよね。5年目にしてようやくスーパーができたし、ここで人とのつながりを強くしてもらい、みんなでいい町をつくっていければ」と話す。

 南東北の沿岸部の方言「はらくっちぃーな(おなかいっぱい)」から名付けた店では、福島産のジャガイモやキャベツ、福島牛を使った定食などを提供する。

 西さんはサッカー施設、Jヴィレッジのレストランの料理長だった。震災で施設は原発事故の対応拠点となり、レストランは閉鎖。東京に避難したが、11年9月の緊急時避難準備区域解除の直後、「町のために働いてくれる人の役に立ちたい」と戻り、レストランを開店。缶詰ばかり食べていた事故対応の作業員に温かい料理を作った。

 経営は決して楽ではない。それでも「震災前の姿に戻るまでやる」という決意は変わらない。元日本代表監督の岡田武史氏(59)の「おまえはいい決断をした。誇りに思う」という言葉を心の支えに、フードコートの開店を決めた。

 現在、町民約5000人の半数ほどしか戻ってきていない。一方で、廃炉や除染に携わる作業員は3000人以上いる。町のコンビニや飲食店には作業着姿の男性が目立ち、その姿を怖がって戻ってこない人もいる。

 「これが現実。食を通して住民と作業員の交流を生み出したい」。再びサッカーの聖地、Jヴィレッジがある町と呼ばれる日が来ることを信じ、きょうも厨房(ちゅうぼう)で腕を振るう。

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2016年3月12日のニュース