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澤さんの前で涙…追い詰められ、孤立してしまった宮間と大儀見

[ 2016年3月12日 11:14 ]

4日の中国戦に敗れ、涙を流す大儀見(左)と宮間

 【なでしこ落日(3)】

 「宮間さんや大儀見さんに気に入られないとなでしこには残れない」

 ある選手が不満をこぼしたことがある。2人に選考の権限はないが、そこまで恐れられる存在になっていた。予選敗退が濃厚となった中国戦後。2人だけで10秒以上も、観客に頭を下げたシーンは異様だった。高い理想を追い求めた主軸と他選手との分裂。大黒柱の澤さんが抜け、チーム内の力関係は乱れていた。

 絶対的司令塔の宮間が、今予選で精彩を欠く予兆はあった。大会前、宮間は「前のやり方をそのままするのではなく、今のなでしこに合ったやり方を見つけたい」と弱音を吐いた。年上にも関係なく「打てよ!」「何やってんだよ!」と怒声を上げたかつての“鬼軍曹”が、今回の合宿ではパスミスに「ごめん」と謝るシーンもあった。昨年のW杯カナダ大会で澤さんの穴を埋めた宇津木が選考外となり、守備に追われるボランチに再挑戦。ピッチ内外での不安はプレーに表れた。

 機能不全に陥った宮間は毎日、澤さんと連絡を取った。澤さんが練習に訪れた時は涙を流すほど追い詰められていた。「一人で何でも背負うんじゃないかと心配」と言った澤さんの不安は的中。佐々木監督も代表招集前には必ず岡山湯郷に電話していた。「宮間は辞退しないだろうか?」。強すぎる責任感は重しとなり、指揮官も宮間の心中を察することができない距離感となっていた。

 高みを目指し続けた大儀見も周囲にとって近寄りがたい存在だった。W杯カナダ大会では、意思疎通を図りたいという若手に対し「そっちから話しかけに来いや。私はそんなに優しくない」と報道陣に言い放ち、手を差し伸べることはなかった。今予選でも4日の中国戦後に取材対応するミックスゾーンで「私自身はこの試合に負けたらどうなるか理解していたが、全ての選手が理解していたかと言えばそうではない」と公然とチーム批判を展開。ある若手は「ここで(記者に)発信するべきでない」と反論した。自身だけでなく他人にも一切妥協を許さない態度は徐々に周囲をしらけさせ、大儀見と好連係を生み出せる2トップの相棒は現れなかった。「嫌い!」。ある選手がそう言うほど仲間との関係は冷え切っていた。

 結束が身上のなでしこがボタンを掛け違えた。一枚岩となれなかったチームの瓦解(がかい)は、あまりにも早かった。 (特別取材班)

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2016年3月12日のニュース