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大会新10発も空砲…大迫勇「意味がない」

[ 2009年1月13日 06:00 ]

<鹿児島城西・広島皆実>表彰を終えてすぐに銀メダルを外す鹿児島城西の大迫勇也

 第87回全国高校サッカー選手権最終日は12日、国立競技場で決勝を行い、広島皆実(広島)が鹿児島城西(鹿児島)に3―2で競り勝ち、初優勝を果たした。敗れた鹿児島城西のFW大迫勇也(3年)は、前半20分に相手DF5人に囲まれながらゴールを決めて今大会通算10得点とし、大会最多得点の新記録を樹立した。鹿児島県勢として4大会ぶり3度目の全国制覇は成らなかったが、超高校級FWは鹿島で新たな伝説をスタートさせる。

【試合結果
トーナメント表
得点ランキング
1大会通算得点ランキング


 まるで磁石に吸い寄せられるように、大迫勇の足元へとボールが戻っていった。衝撃のシーンは前半20分だった。ペナルティーエリアの右側の外でボールを持つと、得意のドリブル突破でペナルティーエリア内に鋭く切り込んだ。いち早く寄せてきた相手DFにボールをクリアされたが、複雑に弾んだボールは再び自らの足元に。さらにドリブルを続けたが、もう1人の相手DFに再びボールをはじかれた。だが、そのボールもまた足にひっかかり、またもドリブルを開始。3人目のDFを巧みにかわし、最後は5人のDFに囲まれながら左足でゴール右へぶち込んだ。

 大会史に名を刻む6戦連発での通算10得点。試合を観戦した鹿島の鈴木満強化部長を「ボールを支配下に置いたら非凡なものがある。仕掛けたときも速いし、可能性を感じた」とうならせた先制弾で4万人超の観衆を魅了した。

 だが、試合は2―3敗戦。昨年の練習試合で3連敗した相手への雪辱はならず、エースの言葉も沈んだ。「チームが勝ってないんで意味がないです。いくら点を取っても決勝で勝たないと意味がない。点を取れる場面がたくさんあったけど、決められなかったのは自分の力不足。自分は苦しい時に取れないFW」。泣き崩れるチームメートとは対照的に、追加点を奪えなかった悔しさをむき出しにしていた。

 次の活躍の舞台は鹿島へと移る。鹿島について大迫勇は「日本を代表するトップレベルのチーム。FWは凄い人たちばかり。(出場するのは)簡単なことじゃない」と厳しい道のりとなることは十分承知している。それでも「点を取らないことには上で通用しない。自分の努力次第。頑張っていきたい」と鹿島のFW戦線への殴り込みを宣言した。

 この日で自身の課題も再認識した。前半17分と後半2分に「得意じゃない」というヘディングで決定機を2度逃した。今大会の10得点もすべて足での得点で、頭での得点はなし。大迫勇は「ヘディングも練習して確実に決められるようにしたい」と前を見据えた。

 大会史上初の4試合連続2得点、大会最多得点記録更新と鮮烈な印象を残した超高校級ストライカー。悲鳴と歓声が交錯する試合終了直後のピッチにチームメートが崩れ落ちる中、1人腰に両手を当てて立ち尽くしたまま、前だけを見つめた。新たな伝説を打ち立てたチーム一の負けず嫌いは、聖地・国立のピッチで悔しさを胸に刻み込んで新天地に向けてスタートを切る。

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2009年1月13日のニュース