雨の日は馬房掃除 毎日休まず乗馬に通った“馬女”

[ 2021年3月5日 05:30 ]

 【競馬人生劇場・平松さとし】蛯名正義騎手が引退して調教師となり、角居勝彦調教師ら数人の伯楽も引退、競馬場を去った。

 入れ替わるようにデビューする面々もいる。角田晃一師ら元騎手の子息も多い今年の新人騎手は8人。藤田菜七子騎手以来となる女性騎手2人が注目を浴びているが、個人的に以前から知っているのが永島まなみ騎手。父は園田競馬の元騎手の永島太郎現調教師。彼とは20年来の仲だったため、私は彼女がまだ小学校へ行くか行かないかの頃に顔を合わせている。

 そんな縁もあったため競馬学校の入学式にも立ち会わせてもらったのだが、昨年の暮れにはこんなことがあった。永島師から連絡があり「中山で模擬レースが行われるから連れて行っていただけないですか?」と言われた。そこでスポニチを介して現場に連絡を取ると、JRAからも取材許可をいただけたので立ち会った。模擬レースを見る永島師は見るからに緊張した面持ち。つぶやくように言った。

 「今の時点でこんなにドキドキしていたらデビュー後は体が持つか心配です」

 永島師には、まなみ騎手の上と下にそれぞれお嬢さまがいる。つまりまなみ騎手は3姉妹の次女に当たる。3人の中で馬に興味を抱いたのは彼女だけだった。乗馬を始めると一日も休むことなく毎日通ったと語る父は、その詳細を次のように続けた。「乗るだけでなく、とにかく馬が好きだったよう。雨の日に馬房を掃除するだけのためでも休まずに通っていました」

 競馬学校の合格が決まった時には、この親子と一緒にお祝いをした。その席で彼女は恥ずかしそうに言った。「父の姿が格好良くて、騎手に憧れました」

 あれから3年。ついにデビューの時が来た。親子ともども、今は緊張していることだろう。そしてそれは他の7人の新人も同様だろう。当然、最初のうちは慣れないことも多く、何かと大変だ。しかし、皆、この日をずっと夢見ていたはず。ついにつかんだ騎手人生をぜひ、楽しんでいただきたい。(フリーライター)

続きを表示

2021年3月5日のニュース