【日本ダービー】フジキセキの隠れた距離適性持つイスラボニータ

[ 2014年5月29日 05:30 ]

併せ馬で蛯名を背に追い切られたイスラボニータ

 過去15世代、1751頭に及ぶフジキセキ産駒が果たせなかったクラシック制覇を難なく成し遂げた時点で、第74代皐月賞馬イスラボニータは、血統タイポロジーの束縛から解放されたと考えている。種牡馬フジキセキのダービー実績は、通算11頭の産駒が出走して2006年のドリームパスポートの3着が最高着順。残る10頭は掲示板にも届いていないのだが、事実上の最終世代に現れた“新種”には、さして意味のないデータだろう。

 蛇足ながら、フジキセキはシャトル先の豪州で芝2400メートルのG1ドバイデューティフリー勝ちのサンクラシークを出しており、ダート部門の最高傑作カネヒキリはジャパンダート“ダービー”を制した。決してイメージほどに、距離延長が足かせになる種牡馬ではない。

 既に各メディアでも報じられているように、イスラボニータは、2歳時に施された競走馬理化学研究所の「エクイノム・スピード遺伝子検査」によって、1400~2400メートルに向く「C/T型」という遺伝子タイプであることが判明している。ちなみに「C/T型」の産駒は両親のいずれかが「C/T型」か、もっと長い距離(2000メートル以上)に向く「T/T型」でなければ生まれない。

 ここから先は推論だが、イスラボニータの母イスラコジーンは、コジーン×クラフティプロスペクターというスピード優位の配合で、前記「エクイノム・スピード遺伝子検査」で規定される3つの遺伝子タイプの中では、最も距離適性が短い(1000メートル~1400メートル)とされる「C/C型」の可能性もある。仮にそうだった場合、父のフジキセキが「C/T型」、あるいは「T/T型」だった、ということになるわけだ。

 思えば19年前、デビュー4連勝で弥生賞を完勝した当時のフジキセキに、距離不安はみじんもなかった。英ダービー馬ミルリーフの同族で、母の父が長距離系のルファビュルーという血統から、気の早い向きは3冠までの期待をかけたものだ。皐月賞を前にしての電撃的な種牡馬入り以降、生産部門でマイル部門に特化してきたのは、偉大な父サンデーサイレンスと共存するための処世術だったとも言える。あるいはイスラボニータこそ、“幻の3冠馬”が最後の最後に現した本性なのかもしれない。

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