【有馬記念】オルフェーヴル“十戒仕上げ”有終Vの道開けた!

[ 2013年12月19日 05:30 ]

調教を終え戻る際、ゴールドシップの須貝師から歩様などをじっくりと観察されるオルフェーヴル(右)

 万感のラスト追いで王者が有終V態勢を整えた。「第58回有馬記念」の追い切りが18日、美浦、栗東トレセンで行われ、凱旋門賞2着以来、引退戦に臨む5冠馬オルフェーヴル(牡5=池江)は池添謙一(34)を背に坂路で併せ馬。他馬の協力を得て一番乗りで馬場入りし、800メートル52秒3~200メートル12秒9と上々の動きを披露した。同レースは19日に枠順が確定、20日にウインズ新橋、後楽園で金曜発売される。

【有馬記念】

 5冠馬の前に道が開けた。現役最後の追い切り。オルフェーヴルは午前7時の坂路馬場開場を待つ列の中程にいた。前には約20頭。馬上から池添が声を上げる。「最後なんで(最初に)行かせてください!!」。その存在に気付いた他馬がスッと道を開けた。まるで海が割れる「十戒」のような光景だった。

 「できれば一番で走りたかった。みんな協力してくれて、ありがたかった」と池添。蹄跡一つない馬場での追い切りは気分が良すぎたのか、序盤から掛かり気味に飛ばす。少し右にモタれるが、気持ちを込めて手綱をしごく鞍上に愛馬も応えた。雨で濡れた馬場を力強く蹴り上げ、先行したダノンウィスラー(5歳1600万)と併入に持ち込んだ。

 800メートル52秒3~200メートル12秒9。池江師が「ヤンキー」と表現するように、常に行儀のいい走りをするタイプではない。行きたがった分ラストの切れはやや鈍ったが、時計は合格点。池添は「行きたがったが、それがいつもの感じ。しっかりやれたのはいいし、走りも動きも先週より良かった」と話した。

 さらに池添は「過去最高の出来という感じではないかもしれない」と率直に話した上で、こう続けた。「自分が乗った中で最高の出来と感じたのは菊花賞とその年の有馬記念(ともに1着)。ただ、当時は馬が成長している分を含めての感触で、今年がどこか物足りないわけじゃない。昨年のジャパンC(2着)よりはずっといいと思う」。秋の比較で言えば、今年は一昨年とほぼ同等か、多少一昨年の方が上。昨年よりは、はるかに上とのジャッジだ。

 万感の思いを胸に、ラストランに臨む。3冠達成、阪神大賞典の逸走と天皇賞・春の惨敗、そして2度の凱旋門賞挑戦での乗り代わり。「コンビを組んで3年半、うれしいことも悔しいことも乗れない悲しさもあった。オルフェーヴルのことを考えない日は一日もなかった。僕と出合ってくれて本当にありがとうという思い」。フランス遠征こそ地元のスミヨンに手綱を譲ったが、日本での16戦は全てその背に池添がいた。「正直、相手どうこうより自分とオルフェの折り合いだけ。今回も掛かるとは思うが、その中でいかにリラックスさせるか」とポイントを口にした。

 ファン投票1位の支持を受けた大一番の後には引退式も待っている。「責任は分かっているつもり。最後の走りを見届けてほしい。ラストランを飾って気持ちよく引退式を迎えたい」。決意に満ちた表情で有終Vを誓った。

 ▼十戒 旧約聖書から。1956年、米国で作られた映画が有名。モーセはエジプトからヘブライ人を解放する同意を取り付け、ヘブライ人と共に移動を開始。だが、気が変わったエジプト王が追いかけてきた。モーセが祈ると紅海が2つに割れ、逃げ道に。軍隊が差し掛かると海は戻って軍をのみ込んだ。十戒とはモーセが神から与えられた10の戒律。

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