365日 あの頃ヒット曲ランキング 3月
【1974年3月】襟裳岬/森進一 拓郎が曲を提供 思わぬアレンジ、思わぬA面変更
★74年3月ランキング★
1 なみだの操/殿さまキングス
2 あなた/小坂明子
3 薔薇の鎖/西城秀樹
4 恋のダイヤル6700/フィンガー5
5 学園天国/フィンガー5
6 襟裳岬/森進一
7 くちなしの花/渡哲也
8 星に願いを/アグネス・チャン
9 しあわせ一番星/浅田美代子
10 母に捧げるバラード/海援隊
注目春風のいたずら/山口百恵
※ランキングは当時のレコード売り上げ、有線放送、ラジオ、テレビのベストテン番組などの順位を参考に、話題性を加味してスポニチアネックスが独自に決定。
【襟裳岬/森進一】
物事がうまく進むにはタイミングが大切である。男性演歌歌手の代表格、森進一とフォークソングの顔、よしだたくろう(現吉田拓郎)が1枚のレコードにかかわったのもそんなタイミングが合ったからであった。
73年、ビクターレコードであるプランが持ち上がった。森をはじめ、橋幸夫や青江三奈らベテラン歌手に意外なミュージシャンと組ませて、新境地を開こうという企画だ。このプロジェクトにかかわっていたのが、ディレクターになりたての23歳の青年。71年、「走れコータロー」が大ヒットしながら短期間で解散してしまった「ソルティーシュガー」のメンバーだった高橋隆は、この提案に組み合わせたい2人が思い浮かんだ。
それが森と拓郎だった。拓郎はある時、酒に酔った勢いで「森進一に曲を書いてみたい」と口に出して言ったことがあった。拓郎の哀愁を帯びた曲調と森の独特の低音がマッチするのではないか。高橋は常々そうみていた。
話はトントン拍子に進み、曲は出来上がった。が、拓郎が作った曲は、今聴く森の「襟裳岬」とは大きく違った。もっとスローテンポで、イントロの象徴的なトランペットの音色もなかった。高橋や森の意見を入れて、編曲の段階で大きく、拓郎のイメージを“壊した”のだった。
森が歌った「襟裳岬」は拓郎の想像を超えた。曲調が変わっていたことにも驚いたが、森のためにと書いた曲を別の曲に料理し直していても、森は迫力満点で歌いこなしていた。怒る以前に拓郎は森に脱帽した。
作詞をしたのは岡本おさみ。拓郎の「旅の宿」やファンの間で絶大な支持がある「落陽」を手掛けた。岡本が北海道襟裳町を旅した際に、地元の漁師と交流した時のことを綴ったもので、サビの「襟裳の春は何もない春です」とは岡本の率直な感想だった。
「たき火」というタイトルが付いていたものを、具体的に「襟裳岬」としてレコードを発売。実は岡本・拓郎のコンビで「世捨人唄」という曲も森に提供しており、レコード会社ではこちらをまずA面、「襟裳岬」をB面にして出荷した。「世捨…」の方がより森進一らしいという意見が大半を占めたからだった。イメチェンのために拓郎に発注したはずなのに、選んだのは森のそれまでの路線を踏襲したもの。人はいざとなると冒険しないものである。
しかし、市場は常に新しいものを求める。まもなく「襟裳岬」の方がいいとファンなどから意見が届き、有線放送も採り上げるようになった。ビクターはA、B面を入れ替え、再発売。レコード売り上げは31万枚を記録。日本レコード大賞を受賞した。
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