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【1989年3月】Runner/BAKFU―SLUMP 歌詞に込めた仲間へのメッセージ

[ 2012年3月19日 06:00 ]

★89年3月ランキング★
1 ROS―COLOR/中山美穂
2 激愛/長渕剛
3 愛が止まらない/Wink
4 地球をさがして/光GENJI
5 Runner/BAKUFU―SLUMP
6 TIME ZONE/男闘呼組
7 涙をみせないで/Wink
8 TRAIN―TRAIN/ザ・ブルーハーツ
9 恋一夜/工藤静香
10 男の情話/坂本冬美
注目桜桃記/小川範子
※ランキングは当時のレコード売り上げ、有線放送、ラジオ、テレビのベストテン番組などの順位を参考に、話題性を加味してスポニチアネックスが独自に決定。

【Runner/BAKFU―SLUMP】

 人生に必要なものは男と女とオゾン層――。「爆風スランプ」改め「BAKFU―SLUMP」となった、リードボーカルのサンプラザ中野はそう答えていた。88年10月に発売し、翌89年にヒットした「Runner」は、少年がどうにもならない恋心を抱き、その葛藤を描いたような歌だった。

 しかし、本当の意味は少し違う。これは考え方の違いから、サンプラザらと袂を分かつことになった長年連れ添ったメンバーへ、伝えたいメッセージを込めて歌ったものだった。

 88年、バンドは“爆風元年”と位置付け、これまでコミックバンドと見られがちだった雰囲気をガラリと変えて、世間的にも認められる正統派のロックバンドとして再スタートすることを誓った。

 4人のメンバーのうち、これに異を唱えたのがベースの江川ほーじん。ヒット曲を狙い、メジャーシーンに踊りだそうとする3人とは、別の道に進むことになり脱退した。82年の結成以来、苦楽を共にしてきた仲間が去る無念さは頭で分かっていても、心では大いに傷ついた。サンプラザはしばらく放心状態だったという。

 その江川を思いつつ作ったのが「Runner」だった。有名なサビの部分、「走る走る俺たち 流れる汗もそのままに」は、いつまでも感傷に浸ってられないという思いを振り払う詞であったし、「いつかたどりついたら 君に打ち明けられるだろう」は、今は遠くても絶対に目指した旗の下へたどり着くという決意表明でもあった。

 発売当初はあまり評判にはならず、オリコンのベスト100からもすぐに消えたが、88年の紅白歌合戦に初出場し、これを熱唱すると火がついた。CDシングルの売り上げは35万枚。この一直線なまでに仲間を思った詞は、リスナーの胸に突き刺さり、以後「大きな玉ねぎの下で」と同様、彼らの代名詞となった。

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