365日 あの頃ヒット曲ランキング 3月

【1976年3月】弟よ/内藤やす子 家出同然から8年 迫力満点 新人なのに姉御の雰囲気

[ 2012年3月14日 06:00 ]

 ★76年3月ランキング★
1 およげ!たいやきくん/子門真人
2 木綿のハンカチーフ/太田裕美
3 君よ抱かれて熱くなれ/西城秀樹
4 春一番/キャンディーズ
5 ファンタジー/岩崎宏美
6 泣かないわ/桜田淳子
7 弟よ/内藤やす子
8 なごり雪/イルカ
9 女友達/野口五郎
10 俺たちの旅/中村雅俊
注目Good,Good-Bye/井上陽水
※ランキングは当時のレコード売り上げ、有線放送、ラジオ、テレビのベストテン番組などの順位を参考に、話題性を加味してスポニチアネックスが独自に決定。

【弟よ/内藤やす子】

 実際は一人っ子。弟はいない。が、ハスキーボイスで情念たっぷりに歌うその姿は、すねた弟のことを気にかけている姉の切ない気持ちを表現するのにもってこいだった。

 歌手を志し、16歳で家出をしてまで音楽の世界に入った内藤やす子は24歳となった75年11月に「弟よ」でデビュー。レコード会社は演歌という位置付けだったが、むしろ内藤が好きなジャンルのソウルに近かった。

 そんな稀有な曲調が耳に留まり、有線から火がついて、2、3月には各種のベストテンにランクイン。レコード売り上げは36万枚を記録。76年9月にリリースした「想い出ぼろぼろ」も32万枚をセールスし、76年の日本レコード大賞最優秀新人賞を獲得した。

 今で言う「目力」があり、ドスのきいた声にアフロヘアという見た目は迫力満点。スタッフが作詞の橋本淳に出したリクエストは「明るさはいらない。寂しさや暗さのにおいがするもの」だった。

 メジャーデビューする前に「レコードデビューさせるから。そのためには金がいる」と言われ、借金してまで工面した60万円をだまし取られた過去も手伝ってか、レコードが発売され、店頭に並ぶまで内藤は、本当にプロの歌手になったという実感がなかったという。

 両親は元浪曲師。その影響か、歌は大好きだった。高校1年の時、どうしても歌手になりたいと両親に訴え、父親に殴られてもハンストをして抵抗。説得に成功し、父の知り合いである浪曲師の二葉百合子の門をたたいた。

 しかし、本当にやりたかったのはロックやジャズ。親の手前、仕方なく3年間は二葉の下にいたが、18歳で飛び出し、ジャズ喫茶や米軍キャンプをバンド仲間と回る日々。金は慢性欠乏でちり紙交換のバイトをしたり、コカ・コーラのビンを酒屋に持って行き、小銭をもらって糊口をしのぐことも珍しくなかったという。

 新人賞の翌年、大麻所持が発覚。2年近いプランクの後に復帰し、スマッシュヒットを飛ばしながら、新人時代に出場できなかった紅白歌合戦に89年に初出場。06年5月、公演中に脳内出血で倒れて以来、後遺症と戦っているが、いまだ復帰のめどは立っていない。

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