NHK「大奥2」コロナ禍と深い関わり 担当CPが意図「まさに今、取り上げるべき話題」幕末まで初映像化

[ 2023年11月7日 12:00 ]

ドラマ10「大奥 Season2」第13話。田沼意次(松下奈緒・奥)(C)NHK
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 話題沸騰中の“男女逆転の大奥”を描くNHKドラマ10「大奥 Season2」(火曜後10・00)の「幕末編」が7日、ついに幕を開ける。過去に何度も映像化された人気コミックだが、「倒幕」のラストまでが映像化されるのは今回が初めて。同局の制作統括の藤並英樹チーフ・プロデューサー(CP)はスポニチアネックスの取材に対し、今回の映像化に込めた並々ならぬ思いを明かした。

 原作は漫画家・よしながふみ氏の同名人気作。3代将軍・徳川家光の時代から幕末・大政奉還に至るまで、男女が逆転した江戸パラレルワールドを紡ぎ、センセーションを巻き起こした。

 過去計3度、ドラマ化&映画化されたが、今回は幕末・大政奉還まで初めて映像化。2025年の大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」も手掛ける森下佳子氏が、今年1~3月の「Season1」(全10話)に続いて脚本を担当。8代・吉宗の遺志を継ぐ若き蘭方医たちが謎の疫病「赤面疱瘡(あかづらほうそう)」撲滅の道を切り拓く姿、開国・攘夷・大政奉還・江戸城無血開城という激動の時代を描く。大筋は原作通りのストーリー展開だが、ドラマは「医療編」「幕末編」と銘打つ。

 10月3日から31日にかけて「医療編」が放送され、この日ついに「幕末編」がスタートする。藤並氏は、「Season1」との違いについて「『Season1』では将軍の色を濃く出して、将軍とバディーの関係で見せていくドラマでしたが、『Season2』では、幕府や徳川家、そして日本…“脅威”になるものに対し、チームで立ち向かっていく人々の『群像劇』として描けたかな」と充実感をにじませた。

 これまで数多くのドラマを手掛けてきた藤並氏。2008年放送の大河ドラマ「篤姫」でも、今回と同じ時代を描いているが、「大奥」では新たな発見があったという。「幕末は、やはりスケールが大きくなってしまうのですが…『大奥』では、原作でも描かれているように、一人一人の登場人物の内面や、人物関係、感情にクローズアップされる。『幕末』や『大政奉還』、『倒幕』というものは、改革していく側から描くことが多いのですが…大奥では違う」と説明。「大奥という狭い世界から見ると、倒幕はこう見えるのか、と。小さい世界や個々の人間の日常の中から歴史を見るというのは、こういうことなのかもしれないなと思いました。今回、完成した映像を見て、僕も新鮮に思いました」と新たな発見を明かし「その世界を、みなさまに楽しんでいただけたら」と呼びかけた。

 過去3度、映像化された人気作。今回4度目の映像化に挑戦した経緯については「ドラマを企画した、岡本幸江プロデューサーが10年前から構想していたもの」とし、藤並氏も「新型コロナの感染拡大があり、現実の世界で人類に対する脅威が身近に迫ってきた。また、ジェンダーの観点もあり、時代の捉え方、見え方を改めて考える転機になると。未知の疫病への脅威という共通点があり、まさに今、取り上げるべき話題ではないかと、私は思っておりました」と思いを込めた。

 幼少期から「時代劇が好き」という藤並氏は、「時代劇だからこそ、普遍的なテーマがより伝わりやすい」と、その魅力を熱弁。「例えば『愛情』や『死』。特に『死』に関する部分は、現代劇だとなかなか伝わりにくい部分もあります。そして、『家族』や『血縁』など。そういったテーマを時代劇は表現しやすく、また現代の設定では扱いづらいテーマでも、時代劇では扱えたりする」と説明し、「時代劇というフィルターを通して見てもらうことで、視聴者にテーマと物語を楽しんでいただけたら」と期待を口にした。

 この「大奥」では、若い男子のみが罹患し、感染すればほぼ死に至る「赤面疱瘡(あかづらほうそう)」がまん延した江戸時代が舞台。漫画に描かれている感染症対策は「手洗い・隔離・人痘法(ワクチン)」と、現代とほぼ合致している。「医療編」では特に、「人痘接種」によって人類が疫病に打ち勝った経緯が丁寧に描かれている。

 現代との共通点について、藤並氏は「原作に忠実に表現しました」と告白。「新型コロナのワクチンとは、もちろん全く別問題」とした上で、「未知の疫病に対する、わずかな人間の知恵や、かすかな希望を描いた。一人では解決できない集団の知恵、英知を集めるというところに、未知のものに対する対抗策があるのではないか…という希望が、原作でも描かれていると思うんです」と、藤並氏は解釈。「さまざまな人の努力・知恵があって『人痘接種』という、一つの解決策が生まれる。人間の知恵が凝縮されていると思う」とし、「名もなき、歴史の表に出なかった人々の英知や犠牲や経験によって、未知の脅威と相対し、乗り越えていく。この“人間の尊さ”を、きちんと描いていきたいと思いました」と、物語を通して伝えたい思いを明日。

 藤並氏自身も、原作のファンだと公言。「よしながふみさんの作品は、どれも登場人物の日常や感情が、凄く丁寧に書かれている。キャラクターの生活や環境が際立って描かれ、凄く共感できるというのが魅力の一つ」と語り、「よしながさんは、凄く優しい人なんじゃないかな。人を見る優しい目線が、作品に現れていると思う。よしながさんのまなざしを通してみる登場人物に、とても共感できる」と、原作の魅力を熱弁した。

 そんな魅力あふれる原作を、藤並氏のチームが肉体化し、深みを持たせた。藤並氏は「脚本家の森下さんは、“コース料理をうまく折詰のお弁当箱に入れる”ことがとても上手。よしながふみさんが作られたおいしいフルコースを、余すことなく、そして物足りないことがないように、お弁当箱の中に入れてくださった。その世界を、楽しんでいただけたら」と呼びかけた。

 ◇藤並英樹(ふじなみ・ひでき)1978年8月11日生まれ。2002年に入局し、大河ドラマ「おんな城主 直虎」(2017年)、「麒麟が来る」(2020年)、連続テレビ小説「とと姉ちゃん」(2016年、)「ちむどんどん」(2022年)など担当作品多数。横浜流星が主演する2025年NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし)~」で制作統括を担当する。

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