「鎌倉殿の13人」新納慎也 匍匐前進の俳優人生 三谷幸喜氏は“道しるべ”全成像変化の共同作業「光栄」

[ 2022年8月7日 08:00 ]

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」第7話。風を起こす?阿野全成(新納慎也)(C)NHK
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 後半に入り、一段と濃密な展開が続くNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(日曜後8・00)。僧侶・阿野全成役の俳優・新納慎也(47)がコメディーリリーフとして抜群の存在感を発揮している。新納にとって、脚本の三谷幸喜氏(61)は役者人生における道しるべのような存在。新納に三谷氏への思いを聞いた。

 <※以下、ネタバレ有>

 稀代の喜劇作家にして群像劇の名手・三谷氏が脚本を手掛け、俳優の小栗旬が主演を務める大河ドラマ61作目。タイトルの「鎌倉殿」とは、鎌倉幕府将軍のこと。主人公は鎌倉幕府2代執権・北条義時。鎌倉幕府初代将軍・源頼朝にすべてを学び、武士の世を盤石にした男。野心とは無縁だった若者は、いかにして武士の頂点に上り詰めたのか。新都・鎌倉を舞台に、13人の家臣団が激しいパワーゲームを繰り広げる。三谷氏は2004年「新選組!」、16年「真田丸」に続く6年ぶり3作目の大河脚本。小栗は8作目にして大河初主演に挑む。

 新納演じる阿野全成は、源頼朝(大泉洋)の異母弟。政子(小池栄子)と北条義時(小栗)の妹・実衣(宮澤エマ)と結婚。修行を積んだ陰陽を駆使し、兄を補佐。僧として北条の権勢が強まっていく様を見つめる。

 新納は16歳の時、出身の神戸でスカウトされ、モデルとして芸能界入り。俳優を志し、大阪芸術大学舞台芸術学科に入学して演劇を学んだ。その後、俳優としての活動をスタートし、20歳の時に上京。舞台を中心に活動した。

 三谷作品には07年、東京・シアタークリエのこけら落とし公演となった舞台「恐れを知らぬ川上音二郎一座」(ユースケ・サンタマリア主演)で初参加。09年には、ミュージカル「TALK LIKE SINGING」(香取慎吾主演)で念願のオフ・ブロードウェーデビューも叶えた。

 16年「真田丸」で大河ドラマ初出演。重圧に押しつぶされて自害したという新解釈で描かれた豊臣秀吉(小日向文世)の甥・豊臣秀次役を好演。SNS上に“秀次ロス”が巻き起こる反響を呼んだ。

 三谷氏が脚本を手掛けた18年元日のNHK正月時代劇「風雲児たち~蘭学革命篇(らんがくれぼりゅうしへん)~」に西洋医学書「ターヘル・アナトミア」の日本初の和訳に前野良沢(片岡愛之助)と一心同体で取り組んだ杉田玄白役で出演。役作りのため、人生初の剃髪を敢行した。

 「風雲児たち」の時もインタビューの機会があった。三谷氏について尋ねると「僕、本当に、こうやって(ジェスチャーを交えながら)匍匐(ほふく)前進で進んできたような俳優人生なんです。ただただ、ミュージカルのカーテンコールで一番後ろの列の端っこで気付かれない程度にお辞儀をしていたところから、匍匐前進で脇目も振らず進んできただけなんです。三谷さんは、そうやって今、目の前にある仕事を1個1個こなしている“腹ばいの僕”の横に、たまにやって来て、匍匐前進する僕に『新納さん、今度はこっちに進んでください』『次はあっちに行ってみたら、どうかなぁ?』と進む方向を指さしてくれるみたいな、そんな存在。これ、うまく文章になります?」と笑いを誘いながら感謝した。

 三谷氏が道しるべのような存在なのは、現在も「変わりません。今回は『大河やろうよ』と道を示してくださいました」。自身のクランクアップが近づく頃に「三谷さんと少しだけお話をさせていただく機会がありました。全成がオンエアに登場し始めてから『新納さんがそう演じるなら(台本は)こうしてみよう』と。それで当初の全成像とはドンドン違う方向に行ったみたいなんですけど『とてもいい形で終われました。阿野全成に関しては僕と新納さんの共同作業です』とおっしゃっていただいて、心から光栄に思いました」と感激を明かした。

 史実では荒くれ者だったため「悪禅師」の異名も取った全成。「僕も最初は腹黒さもあるイメージと聞いていたので、衣装合わせの時、悪禅師っぽく見えるヒゲを自分から提案したぐらいだったんです。最終的には、周りが男っぽいキャラクターばかりなので、差別化もあって中性的なビジュアルになりましたけど。第7回(2月27日)で初登場した後、実は第8回、第9回と、何か企んでいるような、ちょっと謎に悪い顔を画面に残していました(笑)。それが回を追うごとに、コメディー要素が増えていったのは、三谷さんのお言葉を借りれば、半分は僕のせいだったのかなと思います(笑)」。源平合戦や御家人たちの“権力闘争(バトルロイヤル)”が展開される中、視聴者の緊張を解くコメディーリリーフの役割を見事に果たしている。

 今夜(8月7日)放送の第30回は「全成の確率」。源頼家(金子大地)呪詛のための木人形を1体取り忘れた全成を待つ運命は…。

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