ミッツ・マングローブ パーソナリティーと音楽ユニット 極上の「ごっこ遊び」

[ 2022年4月15日 08:15 ]

ラジオのパーソナリティー、音楽ユニットなどで活躍するミッツ・マングローブ
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 【牧 元一の孤人焦点】タレントのミッツ・マングローブ(47)がニッポン放送「ミッツ・ザ・コレクション」(日曜後5・30)のパーソナリティーを務めている。

 音楽への造詣が深いミッツが過去の名曲に隠された逸話や曲への思いなどを語る番組。騒ぐことなくゆったりと話す雰囲気が、休日の夕刻の気分によく合い、聞いていて心地よい。

 ミッツは「この番組は、自由にしゃべるのではなく、用意した原稿を読み進めていくテンションでやり始めました。昔から、フリートークより、定型文を読むことの方が好きなんです。『続いてはニュースです』とか『交通情報センターの◯◯さん』みたいな…。でも、そのテンションを一定に保つことが難しくて、内容によって口調が乱高下することがあります。プロとしてアナウンスメントをやっている方々は、一定に保つところが凄いと思います」と話す。

 ラジオのミッツは、テレビで話す時とは少し異なる印象。前者が「静」だとするならば後者は「動」だ。

 「テレビは最初に出た頃に『そんな小さな声では誰にも聞こえない』と注意されて、務めて声を張るようにして来たんです。テレビの時は、テレビ用のギアを入れていると思います。本当はフリートークも得意じゃなくて、あれはテレビでやっていく上で大急ぎで作ったキャラな気がします」と明かす。

 「ミッツ・ザ・コレクション」のパーソナリティーを務めたのは、この番組のスポンサー側からの指名。ミッツがニッポン放送の別の番組に出演した時、昭和の名曲に関して深く掘り下げて話したのをスポンサー側が聞いて感心したことがきっかけだった。

 この番組の構成にはミッツ自身が深く関わっている。

 「原稿は、私が半分くらい書いています。しゃべっている感じの文を考えて書いているので、本当はそれを一字一句そのまま読みたいんです。でも、番組で実際に読むと、接続詞や語尾が気になったり、アドリブっぽく読んだ方が面白いだろうと思ったり、つい、演技プランを考えてしまう。自分が書いたものには照れみたいなものも生まれるので、そのまま読むのは、なかなか難しいです」

 用意した原稿をそのまま読むのはアナウンサーらの仕事。個性を求められるタレントがそれをあえて実行しようとするのは異色の試みと言える。かつてアナウンサーを志したことがあったのだろうか…。

 「アナウンサーになるとしたら、男性アナにならないといけないし、そもそも、あんなエキスパートにはなれません。私は『ごっこ遊び』が好き。本物になりたいかと言えば、そんな勇気はなくて、まねごとがいちばん好きなんです。女装もまねごとじゃないですか。そういう気質が私の中にあるのだと思います」

 5月4日には、所属する音楽ユニット「星屑スキャット」の新曲「BAD PARADISE」(作詞作曲・西寺郷太)が発売される。90年代初頭のUK風の曲。1960年代から80年代までの歌謡曲の世界を中心に表現してきたユニットとしては攻めに出た印象を受ける。

 「『アーティストごっこ』『ミュージシャンごっこ』という部分です。これまで80年代までやってきたので、90年代に行くのは必然な感じでした。この10年くらい、西寺さんと一緒にやりたいと思っていたんです。彼の感度と私の引き出しをすり合わせたらどんなものができるかとずっと考えていて、それがまず、この1曲で形になりました」

 星屑スキャットは新曲を引っ提げて、5月8日の東京・大手町三井ホールを皮切りに、東京、愛知、大阪でツアーを行う。

 「何か新しい要素は入れていきたいけれど、最近は『今年は来られなくても来年来れば同じようなものをやるから大丈夫ですよ』と言えるコンサートをやりたいと思うようになって来ました。私たちはナルシスティックじゃないし、『往年のヒット歌手ごっこ』をすればいいんじゃないかと思います」

 ごっこ遊びも、それが極上ならば、エンターテインメントとして、聞く人、見る人を幸福にする。これからますます元気に遊んでもらいたい。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。

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