渡辺王将 先手番で痛恨…7度目王将戦で初の連敗 敗戦への「レールに乗っちゃった」

[ 2022年1月24日 05:30 ]

第71期ALSOK杯王将戦第2局第2日 ( 2022年1月23日    大阪府高槻市「山水館」 )

額に手を当て熟考する渡辺王将
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 渡辺明王将(37)=名人、棋王との3冠=に藤井聡太竜王(19)=王位、叡王、棋聖との4冠=が挑む第2局は藤井が98手で勝利し、開幕2連勝とした。封じ手以降、渡辺の居王を左右から挟み撃ちにし、即詰みに。昨夏の王位戦第5局以降、タイトル戦での連勝を8へ伸ばした藤井。過去70期、7番勝負で連勝発進した棋士は92%の高率で獲得していた。第3局は29、30日に栃木県大田原市の「ホテル花月」で行われる。

 えたいの知れない物の怪(け)に取りつかれているのだろうか。渡辺にとって91手目▲4四歩以降は、いわゆる「形作り」。さくさくと手を進める姿からは物寂しさすら漂う。過去29期のタイトル保持を誇るつわものが、持ち味を発揮できないまま投了せざるを得なかった。

 終局後、開口一番に悔いたのは、指し掛け間際に藤井が2時間28分の長考を経て8八に叩いた歩の処理だ。

 「(53手目)▲同金と取ったのがちょっとまずかったかもしれない。その時は仕方ないと思ったが、進んでみたら、そこを過ぎてから駄目にした気がしました」

 感想戦では序盤を省略して、くだんの場面を徹底的に分析。まずは8八歩を無視して攻めに転じる変化を検討したが「うーん、難しい」。ならば本譜の同金に手を戻しても、好転の筋を発見することはできなかった。「(敗戦への)レールに乗っちゃったんですかね…」と、3度に及ぶつぶやきは、静粛の対局室にむなしく響くばかり。

 第62期(13年)の初挑戦以来、今期が7度目の王将戦7番勝負登場となる渡辺だが、開幕連敗は過去に一度もなかった。スタートダッシュを決めてタイトルを奪取・維持するスタイルが定着していただけに、想定外の滞留となる。

 加えて藤井相手のタイトル戦は20年7月16日の棋聖戦5番勝負第4局以来、実に6連敗の屈辱だ。通算成績もこの日で2勝10敗。無限の成長を遂げつつある新星との差を、詰めるどころか徐々に広げられている。

 「(最終盤は)もうちょっとアヤはあるかなと思っていたが、全然駄目だった。やっぱり8八歩までさかのぼるのかな…」

 視線を宙に漂わせ続けた渡辺は次戦に向け「本局は内容が良くなかった。もうちょっとましな将棋を指せるようにやっていきたい」と懸命に顔を上げた。忸怩(じくじ)たる思いを胸に封印して、中5日の再戦に備えなければならない。 

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