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「恋せぬふたり」 幸せの新形式を模索するドラマ

[ 2022年1月13日 08:30 ]

ドラマ「恋せぬふたり」の咲子(岸井ゆきの)と羽(高橋一生)(C)NHK
Photo By 提供写真

 【牧 元一の孤人焦点】恋が始まりそうな展開なのに始まることはない。10日にスタートしたNHKドラマ「恋せぬふたり」(月曜後10・45、全8回)は面白い。

 岸井ゆきの(29)が演じる「兒玉咲子(さくこ)」はスーパーの本社営業戦略課で働く女性。高橋一生(41)が演じる「高橋羽(さとる)」はスーパーの青果部門で働く男性。2人はスーパーの青果売り場で、床に落ちたキャベツを同時に拾おうとして手が触れあう。通常のドラマならば、そこから2人の恋愛模様を軸にした話になっていくところだ。しかし、このドラマでは、そこから別次元の世界が広がっていく。

 「アロマンティック・アセクシュアル」。アロマンティックとは、恋愛的指向の一つで、他者に恋愛感情を抱かないこと。アセクシュアルとは、性的指向の一つで、他者に性的にひかれないこと。

 高橋一生は「私は存じ上げなかった。考証に入ってくださった方々に話をうかがって、自分なりに台本を理解していった。『アロマンティック・アセクシュアル』と言っても、一つではなく、多様性がある。お芝居をしながら学んでいった」と話す。

 岸井ゆきのは「『アセクシュアル』という言葉は知っていて、そういう方がいることは存じ上げていた。ただ、お話をさせていただいたことも調べたこともなかったので、撮影をしながら『どうなんですか?』と質問しながら演じた。デリケートな部分があり、難しい部分があった」と語る。

 咲子と羽は、2人とも、恋をしない。恋はしないが、1人で生きていくことには寂しさを感じている。結婚は難しい。でも、家庭はほしい。この先、どうすれば良いのか…。第1回の最後に、咲子が唐突に羽に告げたのは「私と恋愛感情抜きで家族になりませんか!?」という言葉だった。

 高橋は「人を好きになることと恋をすることは別だと当然ながら思う。ある人にとっては、触れ合うことや肉体の存在がきつい。と言って、人を好きにならないかと言えば、そうではない。そこがとても微妙なところで、そこを感じ直して行かれるのは貴重な体験だと思う」と話す。

 岸井は「恋をしなくても、家族に愛されてきたわけだから、愛は知っている。家族にあこがれる。それが2人の間で成り立つことが重要だと思う。それは愛だと思うし、やはり、人だと思う。どんな個性を持っていても、人間に変わりないということに気づいた」と語る。

 恋せぬふたり。それは、幸せの新たな形式を模索する物語だ。そして、もしかしたら、恋愛という概念を今より広げるドラマになるかもしれない。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。

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