TOCANA編集長・角由紀子氏とオカルトの未来

[ 2021年3月3日 09:30 ]

TOCANA編集長・角由紀子氏
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 【牧 元一の孤人焦点】世の中の不思議な話題やカルチャーに特化したニュースサイト「TOCANA(トカナ)」の角由紀子編集長(38)は、オカルト好きの間で広く知られる人物だ。

 角氏は「父が非常にオカルトが好きで、楳図かずおさんやH・G・ウェルズさんの作品を読んでいて、私も読むようになりました。白夜書房でスピリチュアル系の雑誌の編集をした後、サイゾーに入って、占い系のサイトの編集をしましたが、ずっとオカルトが好きだったので、そこで勝手にオカルトの記事を書いていました。10年ほど前、新しいメディアを立ち上げる機会を頂いた時、オカルトを扱えば数字が取れると考え、トカナを始めました」と振り返る。

 10年前と言えば、テレビの地上波などでは既にオカルトが扱われることが少なくなっていた。表層的には衰退した分野。ところが、その後、YouTubeなどが普及し、誰もが自由に動画などを発信できるようになった今、ネットの世界にはオカルトに関する映像や情報がまん延している。角氏の見立て通り、世の中には潜在的に需要があるのだ。

 「若い人への訴求力があるユーチューバーが増えているので、オカルトをめぐる環境は非常に広がっています。今は実話怪談と都市伝説が特に人気があります。予言も、コロナ禍で盛り返しています。学者たちの言うことがみんな違ったりすると、では、予言はどうなっているのだろうということになります。一方、UFO、古代文明は広がっていません。UFOは現実の軍事的テクノロジーが発達し過ぎて面白みが減ったのでしょう。例え、UFOの映像が撮れたとしても、ステルス戦闘機の方が凄いということになってしまうようです」

 オカルトは時代とともに変化した。米国の著名な理論物理学者のリサ・ランドール氏(58)は、人間が実感できる3次元以外の次元について研究し、その成果を発表している。かつて神秘だったものが、現在は科学の一部になりつつある。

 「科学がオカルトに追いついて来ていて、今は境目が分からないくらいの研究内容が増えています。オカルトを扱っていると、実は自分は一歩先を進んでいるんだという優越感が少しあります。究極的には、死とは何かということになりますが、それは絶対に、死んでみないと分からない。ただ、幽霊とは、異次元からのミクロの素粒子なのではないかと思います」

 オカルトを扱うメディア人は数多く存在する。しかし、角氏が異質なのは、自ら実践しようとするところだ。これまで頻繁に幽体離脱に挑み、最近では20日間にわたる断食を敢行した。

 「大学を中退した頃、人生をあきらめて、毎日、死にたいと考えていました。でも、そう考えるくらいなら、極限まで挑戦しようと思いました。幽体離脱は、やりたくて、2カ月くらい訓練しました。断食は、コロナ禍で気分が落ち込んでいた時、メンタルが向上すると聞いたので、やりました。断食すると、数字に対する勘が鋭くなって、朝起きた時に時計を見ていないのに、分単位で時間が分かることがありました。体内時計の精度が上がったのかも知れません」

 オカルトは、誰が語るかが大事だ。うさんくさい人が語れば、うそくさくなり、似たような内容でも、リサ・ランドール氏のような人が語れば科学的になる。メディアで発信を続ける角氏は今後、この分野で重要な役割を担うことになるだろう。

 「オカルトには、人に言えない趣味、リテラシーが低いというイメージがありますが、それを転換させ、オシャレで、カッティングエッジで、ハイクラスの人がオカルティストというイメージを作りたいと思います」

 オカルトの新時代を思わせる才人の活動から目が離せない。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。

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2021年3月3日のニュース