「麒麟がくる」チーフ監督も驚く川口春奈の“対応力”ツンデレ帰蝶 光秀と2人きり「圧倒的に表情が違う」

[ 2020年2月1日 15:30 ]

大河ドラマ「麒麟がくる」で時代劇初挑戦ながら凛とした存在感を発揮している川口春奈(C)NHK
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 女優の川口春奈(24)がNHK大河ドラマ「麒麟がくる」(日曜後8・00)にレギュラー出演。主人公・明智光秀の幼なじみで、のちの織田信長の正妻となる帰蝶(濃姫)役を好演している。時代劇初挑戦&大河初出演ながら、凛とした存在感を発揮。主演の長谷川博己(42)も「姫っぽい魅力が非常にある中、意表を突かれる芝居も多々あります」、チーフ演出を務める大原拓監督は「あの若さにして、これほど台本を読み込めて、帰蝶の立場を理解して表現できるというのは、正直驚きました」と卓越した柔軟な“対応力”を絶賛した。大原監督に川口の魅力や撮影の舞台裏を聞いた。

 大河ドラマ59作目。第29作「太平記」(1991年)を手掛けた池端俊策氏(74)のオリジナル脚本で、智将・明智光秀を大河初の主役に据え、その謎めいた半生にスポットを照らす。物語は1540年代、まだ多くの英傑たちが「英傑以前」だった時代から始まり、それぞれの誕生を丹念に描く。視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)も初回(1月19日)=19・1%、第2話(1月26日)=17・9%と好スタートを切った。

 川口が演じる帰蝶(濃姫)は、主人公・光秀(長谷川)の主君・斎藤道三(本木雅弘)の娘で、光秀の幼なじみ。政略結婚により、のちの織田信長(染谷将太)の正妻となる。麻薬取締法違反罪で逮捕・起訴された女優・沢尻エリカ被告(33)の代役に昨年11月21日に決定し、12月3日から本格的に撮影に加わった。

 第1話(1月19日、75分拡大版)は残り1分半になり、川口が登場。尾張の織田信秀(高橋克典)が大群を率い、隣国・美濃に攻め込む構え。帰蝶は稲葉山城に入り、父・道三と対面。「父上が戦を始めるという噂があり、馬を飛ばして帰って参りました。御陣にお加えいただきまする」と申し出た。道三は「わしは嫁に出した娘に加勢を頼むほど、落ちぶれてはおらんわ」と一蹴。光秀の叔父・明智光安(西村まさ彦)の姿を見つけると「明智の叔父上、十兵衛(光秀)は息災でいますか?」と幼なじみを気に掛けた。

 第2話(1月26日)は、病の母・小見の方(片岡礼子)のため、光秀が京から医師・望月東庵(堺正章)を連れてきたことにお礼。光秀に「十兵衛、久々じゃな。堅苦しいあいさつは要らぬ。何年ぶりであろう。母上のお供で明智荘に行って以来か。此度は母上のために京より良き医者を連れてきてくれ、かたじけなく思うています。その礼を一言、言いたかった」と語り、久々の対面。「もう1つ。武運を祈る」と光秀を戦に送り出した。

 大原監督の“演出の軸”は「キャラクターがどういうふうに跳ねていくのか、落ち着いていくのか、そこに尽きると思います。演者さんたちから、それを引き出していくのも、我々スタッフの力量が問われる部分。視聴者の皆さんに、どれだけキャラクターに入り込んでいただけるかだと思います」というもの。

 その点から、帰蝶のキャラクター像について尋ねると「まず美濃の人の誰もが憧れる高嶺の花という存在で、凛とした女性であるということ。ただ、その中に愛嬌もある。今風に一言で言えば、ツンデレ。その要素を大事にしたいと思いました。帰蝶は実は2回結婚していて、信長に嫁ぐ前、美濃の守護・土岐頼芸(尾美としのり)の甥・土岐頼純(矢野聖人)の妻になりました。武家の女性の政略結婚は、嫁いだ先で不安定だったりする政治情勢をまとめる外交的使命も帯びているわけで、そういう意味で帰蝶には『覚悟』や『強さ』という要素も絶対的に必要。キャラクターとして、そこも重視しました」と明かした。

 1月16日の初回試写会や18日の「土曜スタジオパーク」(土曜後1・50)に登場した長谷川は、川口について「屈託がなく、姫っぽい魅力が非常にある人。その中で、意表を突かれる芝居も多々あって、帰蝶という役柄とシンクロして見えてくる感じがします」などと称賛した。

 長谷川の「意表を突かれる芝居」というコメントに、大原監督も「分かります」と納得。「光秀と2人きりの時にしか出さない表情と、そうじゃない時の表情が圧倒的に違うんです。帰蝶は光秀のことが好きなんですよね。だから、光秀の前だと本心をガードしちゃう。極端なことを言うと、光秀の前だと甘い顔をしない。そういう恋愛チックな要素を、川口さんは奇をてらわず、非常に巧みに表現してくれます。長谷川さんからすれば、こんなところでもツンデレする?みたいな、意表を突かれる感覚はあったと思います」と撮影を思い返した。

 大原監督も“ツンデレぶり”の演出はつけているが「光秀に対しての表現、道三に対しての表現、他の登場人物に対しての表現がどうあればいいのか、川口さんは端っから確実に分かっていましたね。どんな役者さんでも、大河ドラマのキャラクターをつかんでいくのは苦労するんです。例えば、1カ月ぐらい積み重ねて、ようやく役が見えてきたり。それが、台本を渡してから、わずか2週間。あの若さにして、これほどの読み込みができて、帰蝶の立場を理解して表現できるというのは、正直驚きました」と舌を巻いた。

 「川口さんはプロ意識が高く、任された以上はとことんやるという覚悟が伝わってきます。だからこそ、撮影は淡々と進みますし、各演出(今作の演出は4人)のオーダーに対しても『分かりました』と瞬時に対応できる。そこが素晴らしいと思います。ただ時代劇は初挑戦なので、所作には少し苦労していますが、とても美しい。時代劇の衣装を着せられているのではなく、もうちゃんと着こなしていて、凄く華やかなので、『本当に時代劇は初めて?』と思ったぐらいです」と驚きを隠さない。

 「非常にチャーミングな川口さんですが、肝も据わっていて、それが、先ほど申し上げた武家の女性の覚悟や強さに凄くリンクしているので、彼女に引き受けていただいて、本当によかったと思っています。今後、信長との出会いなどで、帰蝶というキャラクターがどういうふうに変化していくのか、川口さんがどう演じていくのか、とても楽しみにしています」と期待している。

 2日放送の第3話は「美濃の国」。夫・土岐頼純を亡くした帰蝶は明智荘を訪ね、光秀や駒(門脇麦)たちと束の間の気の置けない時間を過ごし、笑顔を取り戻す。序盤、帰蝶と光秀、2人きりのシーンは第2話以上に続く。光秀に対し、どのような態度を取るのか。大原監督も絶賛してやまない川口の“真骨頂”に期待したい。

 ◆大原 拓 1996年NHK入局。津放送局を経て、2000年からドラマ番組部。16年前期の連続テレビ小説「とと姉ちゃん」、17年の土曜時代ドラマ「悦ちゃん~昭和駄目パパ恋物語~」などのチーフ演出を担当。過去に演出した大河ドラマは、演出デビュー作となった03年「武蔵 MUSASHI」、06年「功名が辻」、14年「軍師官兵衛」。大河ドラマのチーフ演出を務めるのは今回が初。

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