V6三宅健 現代アートに魅了され…難解デザインに通じる王道アイドルの奥深さ

[ 2019年9月3日 09:00 ]

 【夢中論】現代アートと聞いて何を思うだろう。とっつきにくい?分かりづらい?でも、知れば知るほど面白い。V6の三宅健(40)は、そんな世界に魅了されている一人だ。アイドルでいながら、どこかベールに包まれたナイーブな内面を秘める三宅自身も、精密な芸術作品のような印象を受ける。話してみると人としての深い奥行きが垣間見えた。

 ステージの喧騒(けんそう)から離れ、静かな美術館で絵と向き合う時間が好きだ。「何回も同じものを見に行くときもあるし、10分だけでも見たくなって行くときもある」。祖父が美術館勤めで「物心ついた頃から、美術品はそばにあった」という。

 現代アートに傾倒し始めたのは10~20代。当時好きだった、街に集う若者から自然発生した「ストリート系」ファッションを通じ、60~70年代に米国でポップアートの旗手として旋風を起こしたアンディ・ウォーホルら、ルーツとなったカリスマに触れていった。

 この日、見せてくれたのは、米の芸術家で現在40代ながら世界最高峰の評価を得るスターリング・ルビー氏の絵画と写った写真。絵画だけでなくブロンズや鋼鉄を使った立体作品など多彩な手法を持ち、社会における暴力や圧力、人間の純粋さなどを描き出す鬼才だ。

 何が描いてあるか、分からない人も少なからずいるだろう。三宅も「作品自体の意味を考えるというよりは、飽きのこない作品が好きなだけ」と話しつつ「例えばそのアーティストがどういう生い立ちや背景を抱えて、この表現に行き着いたか。(分かりやすい絵画より)そこに人生を感じることができる」と醍醐味(だいごみ)を語る。

 「昔から、何のために生まれて、生きているのかということはよく思うんです。生まれた瞬間から、死へのカウントダウンは始まっているわけですから。でも、死ぬために生きてるわけではなく、人間は生きるために生きている。自分に与えられた時間をどう過ごし燃焼するか。それが生涯のテーマなんです」

 自身も「アーティスト」と呼ばれる立場にある。尊敬する画家らと同じように自己表現に人生を懸けているのかと思いきや「自分をアーティストと思ったことは一度もないし、なろうともしなかった」と言い切る。

 「ゼロから何かを生み出してるわけではない。僕らの音楽や舞台は、いろんな人の力を借りて成り立ってるものですから。人に感動を与えたいなんていうのもおこがましい」と、自らをクールに捉える。

 ではアイドルという仕事に何を見いだしているのか。「感動は与えられないかもしれないけど、楽しさや思いは共有できるんです」。そう繰り返した。

 「どうせ世の中に生かされてるなら素敵な社会貢献をしたいし、関わりを持つことができたファンの方々と楽しいことや考え方を共有して、その結果、人生が少しでも豊かになってくれたら素敵」と笑顔で話した。

 現代アートの難解なデザイン性や前衛的な描写から、作り手の生々しい感情や喜怒哀楽を鋭敏に感じ取れる高い感受性が、三宅健という人間をぐっと奥深いものにしている。

 06年ごろ、聴覚障がいを持つファンに手話で話し掛けられ全く答えられなかったことで必死で手話を習得し、14年にはNHK「みんなの手話」でナビゲーターを務めるまでになった。18年には、西日本豪雨の被災地にお忍びで炊き出しに行き、泥にまみれながら作業したり現地の人と触れ合った。さらっと「可愛く生まれてきてすみません」とキザなセリフを吐いたり、いろんな服をオシャレに着こなす「王道アイドル」としての顔は、ほんの一面にすぎない。

 クールな外見に秘められた陰の努力や優しさ、そして人に寄り添える温かさ。それは三宅が現代アートから感じ取る魅力、芸術性をほうふつさせる。「何も知らないよりは、いろんなものをたくさん見てる方がセンスが磨かれる気がするし、磨かれてほしいなと思いますね」とほほ笑んだ。

 ファンとの交流を通じた社会貢献。そのよりどころとなっているジャニーズの世界を生み出した故ジャニー喜多川さんもまた、一種のアーティストと呼べるかもしれない。「10代半ばからエンターテインメントを教えていただき今がある。全てはファンの方たちが喜ぶために、と教えてくれたのがジャニーさんだった」。あす4日に東京ドームでお別れ会が開かれる“育ての親”への感謝は深い。

 「アイドルという仕事に誇りを持ってやってます」。豊かな心を育む水を、みんなの心にまき続けるのが三宅の生きる使命だ。

 《テレ朝「セミオトコ」で熱演 “三枚目”ヤンキーが好評》テレビ朝日で放送中のドラマ「セミオトコ」(金曜後11・15)では、リーゼントで決めたちょっとおバカな伝説のヤンキーを演じ、話題だ。ジャニーズの後輩で主演のHey!Say!JUMP山田涼介(26)演じる主人公とは対照的な“三枚目”の役どころで「なぜか憎めない」「ハマっている」など絶賛されている。「とにかくバカな役柄なんですが、絶妙なスパイスになれるよう、愛されるバカと思ってもらえるようにと演じてます」と物語を盛り上げている。これも三宅の持つ奥深さのたまものかも?

 ◆三宅 健(みやけ・けん)1979年(昭54)7月2日生まれ、神奈川県出身の40歳。1993年にジャニーズ事務所に入所。95年11月、V6の一員として「MUSIC FOR THE PEOPLE」でデビュー。特技の手話を生かし、16年のリオパラリンピック、18年の平昌五輪・パラリンピックのNHK「ユニバーサル放送」(視覚・聴覚障がいのある人も楽しめる放送)でメインパーソナリティーを担当。1メートル64、血液型O。

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