月9「監察医 朝顔」上野樹里の綿密な役作り 今回は陸前高田市へ 取材現場の空気を脚本に反映

[ 2019年7月8日 06:00 ]

月9ドラマ「監察医 朝顔」の役作りのため、陸前高田市の諏訪神社を訪れた上野樹里(C)フジテレビ
Photo By 提供写真

 女優の上野樹里(33)が主演を務めるフジテレビ“月9”「監察医 朝顔」(月曜後9・00)は8日、30分拡大でスタートする。主人公が阪神・淡路大震災で母を亡くしたという原作漫画から、ドラマは東日本大震災で母が行方不明になっているという設定に変更。上野はクランクイン前の4月下旬、役作りのため岩手県陸前高田市を訪れた。小児外科医を描いた同局の昨年7月期「グッド・ドクター」に出演した際も、長野県立こども病院などを取材。上野のキャラクターに真摯に向き合う姿勢、現地に足を運ぶ綿密なアプローチについて、同局の金城綾香プロデューサーに聞いた。

 上野の同局看板枠・月9への出演は2006年10月期の大ヒット作「のだめカンタービレ」以来13年ぶり。06年から「週刊漫画サンデー」に連載されていた同名の人気医療漫画(原作・香川まさひと、漫画・木村直巳)を原作に、新米法医学者・万木朝顔(まき・あさがお)が遺体の解剖を通じて真実を明かしていくヒューマンドラマ。法医学者と刑事(時任三郎)という異色の父娘を描く。

 物語設定のアレンジについて、金城プロデューサー(P)は「原作の漫画が発刊されてから年月が経っているので、今、ドラマ化をするのであれば、やはり東日本大震災だろうという考えが最初にあったのですが、そもそも震災で母を亡くしたという設定を生かすべきかどうか悩みました。そういう過去のない主人公を描くこともできましたが、東日本大震災について調べると、あれから8年経った今なお、ご遺体が見つかっていない方がたくさんいらっしゃるということを初めて知りました。東京は少しずつオリンピックも近づいて、新しい元号にもなって、どこか華やかな空気がある一方、何年もご遺体が見つからないご遺族がどんなつらい気持ちなんだろうと思った時、やはり、やらせていただくべきなのかと腹をくくって、東日本大震災に設定を変えたいと原作の先生や上野さんにもご相談をさせていただきました」と説明した。

 金城Pは「グッド・ドクター」に続き、上野と2回目のタッグ。上野は前回も役作りのため、クランクイン前にさいたま小児医療センター、杏林大学病院小児外科、東京都立小児総合医療センター、長野県立こども病院を金城Pと訪れ、院内を見学しながら実際に働く小児外科医から話を聞いた。

 東京都立小児総合医療センターは都内に2つしかない小児医療専門病院の1つ。ER(救急治療室)、手術室、PICU(小児集中治療センター)、NICU(新生児集中治療センター)、病棟、そしてメモリアルルーム(霊安室)を見学した。長野県立こども病院は他県からも多くの患者が訪れる日本有数の小児医療専門病院。子どもたちがつづった詩画集「電池が切れるまで―子ども病院からのメッセージ」(角川文庫)はベストセラーとなった。

 今回もクランクイン前に東京医科歯科大学、千葉大学の法医学教室を取材。今作の法医学監修も務める東京医科歯科大学の法医学分野教授・上村公一氏から話を聞き、検査室、遺体を保存する冷蔵室、解剖室を見学した。

 そして、キャラクター設定の変更から、4月下旬に陸前高田市を訪問。2012年3月放送のテレビ東京「上野樹里が行く!桜前線大追跡~ヒマラヤから日本列島5400キロの桜ロード~」で苗を植えた桜と7年ぶりに再会。陸前高田市議会議員の福田利喜氏から当時の体験談などを聞きながら、遺体安置所となった小学校の体育館や復興のシンボルとなった奇跡の一本松などを巡った。東日本大震災で親類を亡くした遺族会の人たちとも会い、8年経った胸の内など聞いた。

 上野の役作りについて、金城Pは「『グッド・ドクター』の時もそうだったのですが、まず上野さんは『読んだ方がいい本はありますか?』とおっしゃって、私たちが取材で読ませていただいた本をお渡ししました。その上で、実際に病院や法医学教室、被災地に一緒にうかがったのですが、上野さんは現地の空気を一番感じ取っていらっしゃるし、先生や地元の方がいろいろなお話をしてくださる時、どんなことにも興味を持って聞かれるので、いつもお話が弾みます。そして上野さんは現地で感じたことから、役をどんどん膨らませていってくださるので、主人公の朝顔が本当はこういう人なんじゃないか、こういう弱さもあったり強さもあったりする人なのかと逆に教えていただいて、それを台本に反映させていくという作業をしています」と明かす。

 例えば今回だと、取材の結果、朝顔という女性は「より新米感があり、謙虚なキャラクターの方が良いのではないか」と父などを除き、周囲のほとんどの人に敬語を使うキャラクターに仕上げた。

 丹念に準備した成果か、月9らしい派手さこそないものの、全体にわたる丁寧な作りが印象的な初回。1つの事件が解決した後、東北に向かう父娘の姿に注目したい。

 金城Pは「皆さん日々大変なことがあったり、頑張れないという時もあると思いますが、主人公の朝顔や周りの人が頑張っている姿に勇気をもらって明日も頑張ろうと思っていただける、週の始まりの月曜日にピッタリなドラマにできたらと思います」と意気込んでいる。

続きを表示

この記事のフォト

2019年7月8日のニュース