酒井若菜「交わらない」二刀流のルール 人がつくった土台の上とゼロから表現できる場所

[ 2018年10月21日 13:00 ]

二刀流で活躍する酒井若菜(撮影・会津 智海)
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 ドラマや映画に出演しながら、エッセーを執筆する二刀流の生活を送っている女優の酒井若菜(38)。今月3日に4冊目の著書「うたかたのエッセイ集」(キノブックス)を発表。私生活のハプニングや恋愛観、結婚観などを面白おかしくつづっている。女優でありながら、文章で素の自分をさらすエッセーに懸ける思いを聞いた。

 女優業の合間を縫って月2回、メールマガジン「marble」でエッセーを配信している。「一つの道を究めるのも格好いいけど、2つやって両方できたらそっちの方が格好良くない?と思う。履けるわらじは何足でも履きたいタイプなんです」と笑った。

 酒井にとってエッセーは、ゼロからの表現ができる場所だ。「女優は、監督や脚本の方がつくった表現を体現する役目だと思っている。誰かのつくった土台の上で初めて登場する立場なんです。自分でゼロから何かをつくりたいと思ったときに、私の場合はそれが文章だった」と振り返った。

 ただ、監督や脚本には挑戦しないと決めている。「演技の場では女優しかやらないというのがルールなんです」。女優とエッセーのように「2つが交わらないからこそ、どちらかに重心が傾くことなくやれるんだと思っています」と語った。

 小学生の頃から、「周りから唯一、褒められるのが作文だった」。グラビア時代にも雑誌などで連載を持つなどしており、出版社から提案を受けて08年に小説「こぼれる」を発表。ほぼ同時期に始めたブログでエッセーをつづり、12年にはそれをまとめた著書「心がおぼつかない夜に」を刊行した。

 編集長も務めている「marble」には女優の西田尚美(46)や西原亜希(31)らも参加。「同じ業界で“表現がしたい”という人は大勢いる。でも、女優が女優以外のことをやると、浮ついた感じに思われがちですよね。だからこそ自分たちが一生懸命やって、将来、挑戦したいと思った人が挑戦できる環境をつくりたい」と説明した。

 女優がプライベートの“恥部”までをさらすエッセー。リスクを伴う可能性もあるが、「女優が書くと、読者に書き手の顔が見える。それって凄く良いことだと思うんです」。浴室の椅子が壊れてお尻がハマったというエピソードが「うたかたの…」の中に登場する。「真剣な顔してドラマに出ている人が、家ではそんなことをやっている。だからこそ笑えるんです。一面だけを切り取るのではなく、生活も含めてちゃんと向き合っている人が格好いいなと思う」

 まえがきには「私はきれいな人にならなくていい、美しい人になりたい」とつづった。「今の自分と、他人と、事柄と、きちんと向き合って一生懸命生きている人って、きれいではないかもしれないけれど、美しい」。年齢を重ねた今だからこそ、等身大の自分を表現し、それを続けることが美しいと思える。エッセーには理想の自分への思いがこもっている。

 20代の頃に、自身がエッセーを読んで「楽しそうだな」と感じた40代が近づいてきた。「今度は私の文章を読んだ人が、クスッと笑いながら“大人になるのって面白そう”って思う。そんなエッセイストになりたい」。女優として、エッセイストとして、“美しい人”を目指して二刀流を続ける。

 ≪出演映画が来年1月公開「いろんなもの詰まってます」≫酒井が出演する来年1月公開の映画「LOVEHOTELに於ける情事とPLANの涯て」は、歌舞伎町のラブホテルを舞台に、登場人物の立場や思惑が二転三転していく姿を描く。俳優の宅間孝行(48)が監督を務め、三上博史(56)が14年ぶりに映画主演。酒井は「人間模様、エロ、サスペンス、いろんなものが詰まっています」と紹介。ワンシチュエーションの密室群像劇で、撮影は40分以上の長回し。「終わったときはみんなやつれてましたね」と苦笑いだった。

 ◆酒井 若菜(さかい・わかな)1980年(昭55)9月9日生まれ、栃木県出身の38歳。95年にグラビアアイドルとしてデビューし、97年にドラマ「サイコメトラーEIJI」で女優業をスタート。主な出演作は「木更津キャッツアイ」「龍馬伝」など。1メートル58、血液型A。

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