“ゆるふわ”でも軽くない…中村倫也「セリフ信用しない」カメレオン俳優の矜持

[ 2018年6月5日 10:30 ]

NHK連続テレビ小説「半分、青い。」で“ゆるふわ男子”朝井正人を好演する中村倫也
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 女優・永野芽郁(18)が主演を務める連続テレビ小説「半分、青い。」(月〜土曜前8・00、NHK総合ほか)で、“ゆるふわ男子”朝井正人を演じる中村倫也(31)。現在4作品に同時出演しながら、まったく異なるキャラクターを演じ分け“カメレオン俳優”ぶりをいかんなく発揮しているが、中でも、演じる正人は「大きな存在」とも。13年ぶりに帰ってきた朝ドラ舞台への思いとは――。

 5月12日放送の初登場からいきなりインパクトを残した。子猫をちょこんと肩に乗せ、ヒロイン・楡野鈴愛(永野)の幼なじみ、萩尾律(佐藤健)と対面するシーン。オンエア前には「“なんだコイツ感”を出せれば」と話していたが、その言葉通りの雰囲気を漂わせ視聴者をあっという間に惹きつけてしまった。

 放送直後、ツイッターでは「中村倫也」がトレンド上位に。「何かインパクトがほしかったので、あれはうまくいきました。東京編から仲間入りするキャラクターとしては(視聴者に)受け入れてもらわないと、という使命感もあったので」と振り返る。

 その反響はすさまじく、これまであまり接点のなかった高齢男性からも「朝、出てるよね」と声をかけられることが多くなったという。「何をやっても連絡してこない友達や仕事仲間も『見てるよ』って。今までそんなことがなかったので。見る頻度も層も違いますもんね」と、朝ドラの影響力をあらためて感じている様子だ。

 「半分…」では“ゆるふわ男子”のおっとり感で見るものを癒やし、「崖っぷちホテル!」(日本テレビ系)では競艇好きの料理人を、「ミス・シャーロック」(Hulu)では刑事役を熱演。また、映画「孤狼の血」では暴力団の構成員としてキレッキレの狂犬ぶりを披露するなど、異名でもある“カメレオン”ぶりを発揮している。どれが本当の中村倫也なのか?「大いに混乱してほしいですね」と笑わせつつ「一生懸命やっているとは思われたくない。軽やかだね、器用だねって言われているぐらいがちょうどいいんです」と話す。

 そうやって、一つ一つ役を脱ぎ捨てながら、別の役を涼しげに羽織っていく印象がある一方で「実際には、演じるそれぞれのキャラクターってそんなに軽いものではないんです」とも明かす。設定や、台本に書かれていることをしっかり体現することが前提とした上で、演じる上で大事にしているのが、そのキャラクターの持つ“可能性”だ。

 「大雑把に言えば、セリフも信用していないんです。人って嘘もつくし見栄っ張りだし。書かれていることを表現するだけじゃなくて、もしかしたらコイツはこうなのかもしれないって考えながら演じるタイプなので」。

 例えば、今作で言えば正人と鈴愛の関係性。劇中では鈴愛から正人に告白したが「好きになったのは正人の方が先なんじゃないかという手応えがあって。この時に正人は鈴愛を好きになったのではという瞬間があった。その感覚は自分だけの宝物」。脚本の北川悦吏子氏や共演者とも、この思いを共有することがなかったといい「観ている方も“あの時かも”“あの瞬間だったに違いない”って想像してもらえたらうれしい。もちろん答え合わせはしません。そういうところが朝ドラや連ドラの楽しい部分ですし、そういう楽しみ方もあるんじゃないかと」。

 05年後期放送の「風のハルカ」以来、13年ぶりの朝ドラ。当時、演出を担当していた勝田夏子さんが、今作の制作統括でもあり「成長した姿を見せたいという思いでやっていた」。13年前に向き合った役柄が、正人の持っている空気感に近く、その偶然に不思議さを感じている。それゆえ、100人100様、演じるすべてが“はまり役”ともいわれる中村にとっても正人は「大きな存在」と言い切る。

 ただ当然ながら、この“ゆるふわ”に固定されることも望まない。「新しい顔にも興味を持ってもらいたいですから。それをずっとやっていくためには、実体をつかませ切れずにやっていかないと」。生涯カメレオン宣言。この後正人ロスに陥っても、中村の様々な顔が喪失感をぬぐってくれるに違いない。

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