「ブラタモリ」100回“3人のキーマン”語る舞台裏 番組制作はタモリとの「せめぎ合い」

[ 2018年3月24日 08:00 ]

「ブラタモリ」第4シリーズに出演するタモリ(左)と近江友里恵アナウンサー(C)NHK
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 タモリ(72)が街をぶらぶら歩きながら歴史や魅力に迫るNHKの人気番組「ブラタモリ」(土曜後7・30)。2015年4月11日にレギュラー放送として復活した新シリーズが24日の放送で100回目のオンエアを迎える。スタッフの入念な下調べによる丁寧な番組作りと、専門家をもうならせるタモリの博識ぶりが人気の秘けつ。16年には測量・地図への関心を高めることに功績があったとして、制作スタッフが国土地理院から「測量の日」(6月3日)の功労者に選ばれた。記念すべき100回目の放送を前に、同番組が誇る“3人のキーマン”、チーフ・プロデューサーを務める中村貴志氏、垣東大介氏、チーフ・ディレクターの石原謙一郎氏に番組の舞台裏を聞いた。

 ◆100回目は“通過点” 近江アナのラストにタモリも寂しさ

 ――第4シリーズが「♯100宮崎」でついに放送100回目を迎えます。率直なお気持ちを教えてください。

 中村氏「正直あまりそういったことは考えずにやってきましたが、“よくやったな”という感じはありますね。100回目のロケでタモリさんにその話をしたら『ああ、もう100回もやったんだね』と感慨深そうでした。でも、100回目の放送だからといって深い意味はなく、通過点と考えています」

 ――100回目の放送をもって16年4月からアシスタントを務めた近江友里恵アナが卒業ですね。

 垣東氏「100回目のロケは近江アナが最後だったので、タモリさんにとってはそっちのほうが大きかったかもしれないですね」

 石原氏「タモリさんも寂しそうにしていましたね。番組で神社を訪れるのが恒例になっているんですが、毎回タモリさんがお決まりのように『近江ちゃん貸して』とお賽銭を借りるんです。距離感の近い2人がほほ笑ましかったですね」

 ◆台本なしの“リアル・ドキュメンタリー” ロケバス降りて30秒で撮影開始

 ――北は北海道から南は沖縄まで日本全国の都市を訪れてきましたが、毎回行き先はどうやって決めているのですか?

 中村氏「行き先は“タイムリーな場所”を選ぶようにしています。『♯3金沢』(15年4月25日放送)は北陸新幹線が開通したタイミングで、『♯40伊勢神宮』(16年6月4日放送)はちょうど伊勢志摩サミットがあった時期でした。あと『♯16軽井沢』(15年8月29日放送)は避暑地なので暑い時期に。見た人がその現場を旅してみたいと思うようなタイミングで放送していますね」

 垣東氏「タモリさんがどこかに行きたいからといった理由で場所を決めているわけではないんです。むしろ、タモリさんも行ってみないと何も分からない状態でロケに行ってもらっているんですよ」

 石原氏「タモリさんには事前に行く町くらいしか伝えていないんです。前日にその町に行って、朝になってロケ地点に連れて来られて『お、今日はこういうことか!』と初めて内容を知る、といった感じです。段取りの確認などもないので、ロケバスを降りて30秒後ぐらいにはカメラを回し始めています」

 垣東氏「だからタモリさんは毎回“今日は何のテーマだろう”と推理しています。冒頭でよく“あ、違ってた”とか“ほとんど当たってた”といった話をしていますよね。タモリさんご自身にも番組を楽しんでいただけていると思っています」

 中村氏「タモリさんのリアクションは作られたものではなく、本音なんですよね。そういったドキュメンタリーのようなところも、番組が生き生きとしている理由なのかもしれません」

 ◆下準備に2カ月 番組づくりは博識・タモリとの“せめぎ合い”

 ――やはりタモリさんの博識ぶりに驚かされることは多いですか?

 一同「毎回ですね」

 中村氏「制作陣はおよそ2か月前から下調べをして、“これはさすがにタモリさんも知らないだろう”と思って番組の流れを組み立てるんですけど、“おお、それも知っていたのか”と毎回驚かされます。もちろんご存じじゃないこともありますけどね。そういったところのせめぎ合いを我々も楽しんでいます」

 ◆ロケ番組ならではの苦労 天候に泣かされることも…

 ――ロケ番組ならではの苦労もあったのではないでしょうか?

 中村氏「最初の頃はよく天候に泣かされました。この番組は天気が大事な番組なんです。100回目のロケは『なぜ宮崎は“南国リゾート”になった?』というテーマなのですが、雨が降って傘をささないといけなくなったらどうしようかなとヒヤヒヤしていました」

 垣東氏「『♯50富士の樹海』(16年10月15日放送)など、天候が良くないとロケが成り立たない回もあるんです。あと『♯5鎌倉』(15年5月9日放送)は、春先なのに雨が土砂降りでものすごく寒かったんですよ。ロケが4月上旬だったので花見のお客さんで混雑していたらどうしようと思っていたら、土砂降りの大雨でほとんど人がいなかったこともありました」

 石原氏「『♯1長崎』(15年4月11日放送)も寒い季節だったから暖かい九州を選んだのに小雪が降ったり、『♯33那覇』(16年3月5日放送)で沖縄に行ったときも観測史上何十年ぶりの雪が降ったんですよね」

 中村氏「『♯43会津』(16年7月2日放送)と『♯44会津磐梯山』(同7月16日放送)の時は、天候の影響でロケの順番を入れ替えたりしましたね。やはり、雨が降ると山に登れないので。そういったこともあってロケの1週間前からずっと天気予報をチェックしています」

 垣東氏「天候でロケが変更になったことはありますけど、タモリさんの体調不良などで中止になったりしたことは一度もないですね」

 石原氏「本当にお元気ですよ。山道もサクサクと登っていきますし」

 ◆今後は47都道府県制覇へ 独自の視点で謎解き明かす

 ――100回目以降の展望や、視聴者へのメッセージをお願いします。

 中村氏「まずは“全県制覇”ですね。まだ行けていない県もありますし、そういったところから来てほしいというお話もあります。我々にとっては100回のうちの1回かもしれないけど、地元の人にとっては特別な1回だと思うので、毎回“特番”をつくるような気持ちで取り組んでいきたいです」

 垣東氏「いろいろな場所に行って、この番組ならではの視点で、地元の人も知らない町の秘密を解き明かしていきたいです」

 石原氏「タモリさんが『日本の地形や地質は面白い』と常々おっしゃっていますが、本当に訪れる先で必ず面白いことを発見できるんです。我々も手応えを感じているので、これからも楽しみにしていただけるとうれしいです」

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